ミネアポリスで黒人男性が白人警官に首を圧迫されて死亡した事件に抗議する動き。

アメリカに暮らしてもうじき20年。今まで、何度こういった悲劇を見聞きしてきただろう。今回、正直、「またか」という思いがよぎった。この数ヶ月だけで、罪のない市民が、黒人というだけの理由で、白人や、警察官に殺された事件が、何件も起きている。ここ10年ほどでも、大きく取り上げられた事件だけでなく、身近な家族が殺された黒人はたくさんいる。今から100年ぐらい前には、マンハッタンで、アイリッシュ系アメリカ人が黒人をリンチしたりとか、南部では、もっとひどいやり方で、黒人を殺したりとか、本当にアメリカの人種差別問題は、根深い。歴史がありすぎて、外国人の私には、すべてを理解できないと思う。ただ、これだけ多様性が広がっている21世紀の今でさえ、これほどまで、黒人が差別され、市民を平等に守るべき警察官に殺される。まるで、100年前から変わっていない。私たちは歴史から、いったい何を学んできたんだろう。

 

今回、Black lives matterのうねりが、これほど大きくなったのは、コロナ禍で多くの人が家にいて、ずっとネットを見ているような状況だったからというのも一因だと思う。ニュースで伝えられるのは、コロナへの感染率や死亡率が高いのは、もともと持病を抱えていたり、健康保険がないために医者にかかれなかったり、さらに、衛生状態や栄養状態のよくない、黒人やヒスパニックの人々。多くの人がリモートワークで家にこもってる間に、スーパーやデリバリー、介護の仕事に出て、感染の危険にさらされながら働いているのも彼ら。そういった、収入や健康の格差による問題が浮き彫りになってきたところに、白人の警官に8分以上首を圧迫されて息絶えた黒人の、ショッキングな映像がSNSに出回ったことで、多くの人が黙っていられなかった。

 

インスタグラムでは、#blackouttuesdayとハッシュタグをつけた一面真っ黒の投稿を上げて抗議する人が続出した。

 

でも私の中で生じたのは、かすかな違和感。

 

…こうやって次々投稿あげてるけど、こういった抗議をする白人は、彼らが知らない間に、黒人でないことを理由に、自分たちが優遇されてきたことを、本当に理解してるのか?

 

…この中には、黒人の権利を守ろうと言いつつ、つい先月、アジア人に対して、「コロナ!」と言い放ったり、暴力を振るったり、差別的な言動をしてた人もいるんじゃないの?とか。

 

…かくいう自分にも、思い当たることがある。

もちろん、市民を守るべき警察官が、黒人を死亡させるということに、なんの正当性もない。 間違いなく。

ただ、アメリカ社会を生きてきた日本人女性の私は、申し訳ないけど、正直に言わせてもらえるなら、見知らぬ黒人男性に対して、多少の恐怖感を持って過ごしていることを否定できない。まず、体格の差。特に身長も高くてごつい男性が周りにいるとき、本能的に、ちょっと身構える。この国では、自分の身は自分で守らないといけない。平和そうな街でも、いつでも逃げたり隠れたり叫んだりする準備をしておかないと。

そして、言葉の壁。アメリカに20年いるけど、最初の3年は99%白人の中西部、そのあとは、NYLAと、多様性のある街で過ごしてきた中で、黒人の早口のブロークンイングリッシュやスラングを100理解できない。

そして、過去のトラウマ。2006年にNYハーレムで黒人の通り魔に襲われた経験を持つ私は、他にとても好感の持てる黒人たちを数多く見てきたにも関わらず、知らない黒人を怖いと思う気持ちがないといったら、嘘になる。もちろん、怪しい人と、そうじゃない人は、目を見れば大体わかる。それは、どんな人種にでも言えること。

 

ただ、今回のこのblack lives matterの動きの中で、こんな偏見のある私は、自分自身を100protesterと呼んでよいものか、少しためらってしまった。お腹の底の底から、「私は、自分が100%差別主義者ではないと言い切れるか?」という疑問がふっとわいてきて、戸惑ってしまった。私は、自分のことを、(他の多くの人が自分がそうであると信じたいように)平等主義者で、差別を毛嫌いし、いつでも人の助けになりたいし、困った人は助けたいと思う、これ以上ない善人だと思ってたのに。

 

例えば、私の抱いている偏見。

・黒人は体が大きくて、強い。→黒人でなくても、大きい人はいっぱいいる。オランダ人とか、2mを超える身長の人もいるのに、黒人だけが大きくて強いわけではない。

・黒人の話す言葉の壁→ゆっくり聞けば、理解できるし、理解できなくても、ニュアンスとして、攻撃的なのか、揶揄してるのか、友好的なのかぐらいはわかる。

・過去のトラウマ→私を襲った人がたまたま黒人だっただけで、あやしい人は、人種を問わず、いる。日本だって、最近物騒な事件がたくさん起きていて、日本人だからといって、100%信用できるわけじゃない。

 

こう考えると、自分は差別なんかしないと思っている私だって、黒人を全く差別していないとは言えないと気づいた。

 

ただ、自分を守るのは自分しかいない。黒人が多く住む地域は、所得が低く、犯罪が多いのも事実だから、自衛のために、そういったところにはあまり近付かないとか、危ないと思ったら、すぐ逃げられるように注意しておくとか、最低限の警戒は必要だし。

 

人は区別や差別をしてしまう生き物。アメリカ人はこういう人が多いとか、中国人はこうだとか、イタリア人は、フランス人は、韓国人は、日本人は、とかいった偏見は、特にNYに生きてると、みんな持ってる。ある意味、その国の文化と人間性を、予備知識として理解しておくと、この人はxx人だから、まあこの行動を取った意味は理解できるみたいな、その人との距離感を図るのに便利なものだから。

 

もちろん、日本人でも、誰一人同じ人がいないように、生まれ育った環境や考え方や行動は、みんな違う。それでも、ステレオタイプに当てはめることはよくある。

 

偏見、差別、思いこみ。

 

それを超えて、それに負けないで、その人を理解しようとする、例えば、自分がその人の立場だったら、ということを想像できれば、安易に差別や暴力が起こることはなくなるんじゃないかな。もちろん、人それぞれ、考え方は違うから、私がもし彼の立場だったら、と想像することと、彼が実際に考えたり行動したりすることは違うだろうけど、英語でいう、put yourself in his shoes (彼の靴に身を置く、彼の立場になって考える)ことを日々実践して、会話を通じてそこで生じた誤解を解いていけば、争いごとは減っていくんじゃないかな。そう願わずにはいられない。そして、今回のBlack lives matterの動きが大きな力となって、今度こそ、偏見にあふれた警察の仕組みを変えて、罪のない黒人が犠牲になることが二度と起きないように、切に願う。

NYで家ごもりの生活が始まって、約2ヶ月。
先日、夜寝る前に、気になっていた左下奥歯の違和感がひどくなっているように感じて、意を決して、歯医者に行くことにした。

そもそも、去年の4月に、その左下奥歯の詰め物の下に虫歯があることがわかり、そこを治療してクラウンをかぶせたけれど、3月の初め頃、自転車に乗っていたら、なんだかその歯のあたりだけ、すうすうと冷たい空気を感じるようになり、これは歯医者に行った方がいいかも、と思って、予約を入れたのが、3月18日。先方から、12日はどう?と聞かれたけど、用事が入っていたので、翌週の18日にお願いした。
しかし、16日に歯医者から電話がかかってきて、コロナのために、閉院するとのこと。
仕方ない、大丈夫、気のせいということにしようと、無視していたけど、だんだん左側の歯でものを噛むと例の歯が痛むようになってきた。
気になってきたので、1ヶ月ほど前、かかりつけの歯医者に電話すると、病院は閉鎖中だけど、電話は繋がって、受付の人に事情を説明すると、折り返し、担当の歯科医から電話がかかってきた。彼は、おそらく70代ぐらいの高齢で、治療はしてないけれど、今も開いている近くの歯医者を紹介してくれた。
それでも、このコロナのご時世。歯医者と歯科衛生士の前で、長時間大口開けて治療を受けるなんて、「コロナさん、カモン!」と言ってるようなものじゃない?という不安が拭えず、そのままにしておいた。

でも、柔らかいミンチの肉、ごはん、豆腐を噛んでも痛い。右側で食べるようにすると、あごの使いすぎで、右肩こりがひどくなった気がする。このまま放っておいて、悪化して、歯を抜かないといけなくなっても困るので、意を決して、今も開いているという歯医者に電話して、予約を取ることにした。

幸いにして、電話した日の午後2時から空きがあるというので、早い方がいいと思って、その日にお願いした。歯科医は週に2日しか来ていないので、その日を逃すと、来週まで、診てもらえないらしかった。

電話で、「この治療は、急を要するものですか?」とまず念を押される。「イエス」と答えると、「わかりました。じゃあ、こちらに来られるための手順を説明します」と続いた。まず、歯医者の入っているビルの前に着いたら、電話を入れる。前の患者の治療が終わって患者が出て行き、必要な清掃、消毒が終わっていることを確認するために。
その確認ができたら、歯医者のあるフロアに行く。入り口にあるクローゼットに、所持品を全部入れる。その後ろに洗面所があるので、そこで手を洗う。
必要な書類は、事前にメールで送ってくれて、問診票にも記入しておき、着いてからの接触をなるべく減らすようにしておく。その後で、初めて、診察が始まる。
その手順に同意した上で、2時の診察に間に合うように、家を出て、歩いて歯科医に向かう。

ビルに到着。入り口で、電話しようとケータイを見たら、10分ほど前に着信履歴と留守電が入っていた。前の患者さんの治療が長引いているので、私の治療も遅れそうだとのこと。サイレントにしていたので、気づかなかった。折り返し電話したら、15−20分ぐらい、ビルの外で待ってほしいとのこと。こんな状況の中で、私の歯を診てくれるだけでもありがたいのに、待たされても文句などありえません。幸い、外は気持ちのいい五月晴れ。セントラルパークも近いし、散歩や日向ぼっこをして、待つことにした。
しかし、予想以上に待たされ、結局、準備完了の電話がかかってきたのは、3時ごろ。前の患者の治療が押していたのと、消毒に時間がかかったのか。それでも、1週間待たされるよりはいいし、消毒に念を入れてくれる方がありがたい。

ビルの上階に上がり、病院に入ると、待合室の椅子という椅子には、全部ビニールがかぶせてある。患者は一人ずつしか取らないので、病院関係者以外は、私しかいない。受付のカウンターの周りには、天井から透明のカーテンがかかってあり、それを隔てて、受付の人に挨拶をして、あらかじめ言われていた通りの手順で、ケータイ含め、荷物をクローゼットに入れ、手を洗う。通りに面した窓は開いている。
iPadで必要な書類にサインをして、手指を消毒。

やがて、治療室の向こうから、防護服、ヘアキャップ、マスク姿の歯科医がやってきた。初対面の挨拶をして、まず、検温。おでこに体温計を当てられ、念の為、2回検温。平熱を確認されて、治療のエリアに入れてもらえる。
簡単に歯科医に症状と経緯を説明して、まずはレントゲンを撮ることに。
と思ったら、その前に、歯科衛生士から、この書類を読んでサインするようにと言われる。
その中身とは、「私と私の同居人は、過去14日間、コロナにかかっていません。またコロナの症状もありません。過去14日間、イタリア、スペイン、中国、韓国などに旅行していません。また、この歯科治療は緊急を要するものです」等々で、それぞれの項目にイニシャル、そして、この内容に間違いはありませんというサインをさせられる。

そして、ようやく、レントゲン。(ちなみに、ここで初めて、つけていたマスクを外す。)立ったまま、あご全体を撮る機械で、頭が動かない様に、自分で数秒ハンドルを握らないといけない。撮影が終わると、すぐに、アルコールで、自分の手指を消毒。

診察室に向かうと、台に座る前に、まずシンクにリステリンみたいなうがい薬が用意してあって、口をすすぐ様に言われる。こういううがい薬で、コロナは死ぬのかなと思いながら、まあ、なんか殺菌してくれるんだろうと、素直に従う。
診察台は、ビニールのカバーが掛けられ、その上に、もう1枚、おそらく患者ごとに変えるのであろうビニールのカバーが掛けてある。見ると、診察台の周りの機械という機械に全部ビニールが掛けられている。いつもなら、診察台のすぐ横に据え付けてあるうがいをする流しもコップもない。もし、そこに小さいうがいの台があれば、飛沫が飛び散り、危ないのかなと思いながら。
防護服、マスク、ヘアキャップ、フェイスシールドをした歯科衛生士がやってきて、左の奥歯をよく調べるために、ピンポイントのレントゲンを撮る。しばらくすると、診察台の目の前にあるテレビスクリーンに、レントゲンの映像が映し出される。4方向からスライスして見られる様になってるみたいで、ハイテクさに驚く。
歯科医がやってきて、その結果を見て、左下奥から二つ目の歯を調べる。冷たいものに敏感かも、というと、白いタバコの様な形をしたものをその歯に押し付けてきた。激痛が走る。どうやら、氷の様に冷たい器具だった様で、断熱作用の高い陶器製のクラウンの上からでも、それほど敏感だということは、神経までやられてる虫歯だったみたい。かなり躊躇したけど、緊急で来る価値があるくらいの虫歯だったんだと思うと、来てよかったと思えてきた。

そこで歯科医が、「ところで、治療費の説明は誰かにしてもらった?」と切り出した。
「いや、まだ」と答えると、「レントゲン代で、これだけ、治療費がこれだけになるけど、いいかな?」と言う。アメリカの歯科医療は高いと知ってはいたけど、来る前に勝手に想像してたより、3倍以上のお値段!しかし、この後に及んで、ノーと言えるはずもなく。保険会社はいくら払ってくれるんだろうか。。。とにかく「払いますよ〜」と言う書類にサインさせられ、ようやく治療が始まる。

長時間大口開けて、コロナさん、いらっしゃ〜い!の治療になるのかな、と思ったら、そこは細心の予防策を取っている。
まずは、歯の麻酔。これをしなけりゃ始まらない。そのあと、始めに、治療する歯の反対側、右側に、突っかい棒というべく、ゴム状のスペーサーを入れて、長時間口を開けていても顎が疲れない様にする。その上で、ゴム状の膜の真ん中に小さな穴が空いたもので、口腔内全体を覆い、その小さな穴から、虫歯になっている歯だけがのぞくように固定する。そうすることで、私の喉の奥が、外側から完全に遮断されて、歯科医へ晒されるリスクが減る。ただ、息が苦しくなるので、鼻に、酸素が送り込まれる呼吸器のようなものを装着して、ちゃんと息ができるようにしてくれる。これで、準備完了。
顎は疲れないし、呼吸もできるし、ゴムの膜のおかげで感染のリスクは低くなったし、意外と心地は悪くない。
歯科医は、私の口の真上にあるライトに備え付けられた拡大鏡を覗きながら、治療を進める。普段は、歯科衛生士が横から、たえず削った歯が喉に入らないように吸引したり、口腔の粘膜が乾かないようにミストをかけたりするけど、ゴムの膜で喉の奥と隔離しているので、その必要もなく、歯科医のアシストに徹することができていいのかも、これ画期的!とか一人で思ったりした。

レントゲンを見ると、病巣は歯根の一番下、かなり深い、神経に近いところにあるようで、麻酔してるとはいえ、痛そうだなあと面食らう。道理で、冷たいものがあんなにしみる訳だ。おそらく、1年前にクラウンを入れた時、その下にあった虫歯を全部取り切れてなかったんじゃないかなと思う。
治療中にも、2回レントゲンを撮って、病巣が全部取り切れていることをちゃんと確認してから、仮の詰め物を入れてくれる。

全部で1時間ほどで、治療終了。
2−3ヶ月して、かかりつけの歯医者がオープンしたら、そこで、詰め物を入れ直してもらってね、と言われ、診察室を後にした。

受付に戻って、支払いの話をする。
念の為、保険のカードを、家でコピーして持っていったのに、なるべく接触を減らすために、それ渡さないでと言われ、代わりに私がカードの必要な事項を読み上げると、それを受付の人がその場で、パソコンに入力していった。支払いのクレジットカードも、手渡しするんじゃなく、カード番号、有効期限、3桁のセキュリティコードを、私が口頭で読み上げるのを、そのまま彼女がパソコンで入力して、お会計終了。レシートは、メールで送ってくれるって。コンタクト・レスが徹底している。さすが、このコロナ禍でもたくましく営業してるだけあるわ。

こういうご時世に、私のような緊急の患者を受け入れてくれてありがとうと、何度も感謝の意を表し、開いたままになっているドアから、エレベーターホールに出る。後ろを振り返ると、受付の女性が、私のジャケットをかけていたハンガーを、消毒液を使って拭いていた。こういう徹底した消毒をしてくれているからこそ、このコロナ禍のNYでも感染者が出ずに営業を続けていられるんだと思うと、本当に頭が下がる思いだった。

その後、夜になって、歯科医から、「調子はどう?」という確認の電話もいただき、アフターケアも万全。病巣が深かったからか、心持ち、通常より念入りに麻酔をされた気がして、麻酔が切れたのはされてから約6時間後の夜の9時半。その後も、食事の時はしばらく痛みが続くけど、とにかく病巣はしっかり取ってもらったし、1−2週間痛みが続くのはよくあることだということなので、しばらくの我慢。。

NYでのコロナの感染は深刻で、だいぶ落ち着いてきたとはいえ、まだ街を再開するには時間がかかりそう。その中で、病院といった最前線の現場を直接目にすることはなかったけど、今回、自分が緊急で歯医者に行って、必要な医療行為を受けるに当たって、感染のリスクのある領域に踏み込んだ時、その治療がどれだけ感染のリスクがあって、そのリスクを防ぐために、医療従事者の方々が、どれだけ細心の注意を払って働いているかを、肌で感じた。医療従事者の方々を始め、スーパーなど必要不可欠な業種で働いている人々に、改めて感謝するとともに、彼らへの負担を減らすために、引き続き、自分でできる予防策をやっていこうと思っている。


新型コロナウィルスが蔓延するニューヨーク。

目まぐるしく感染状況が悪化し、自宅待機を始めたのが、ちょうど1ヶ月ほど前。少しずつ自分の周りの環境は落ち着いてきたので、備忘録を兼ねて、3月初めからの状況を思い出して書きとめてみることにした。

 

 

32日ごろ、NY市で最初の感染者が報告される。

 

その頃から、握手はやめて、エアハグやヒジタッチをするように、手を洗う時は、石鹸で少なくとも20秒洗うように(ハッピーバースデーを2回歌うとちょうど20秒)とか、周りで言われるようになってきた。

 

39日(月)ある患者さんが病気だということでキャンセル。後で聞いたら、3日(木)に一緒にトランプゲームをした友人が、その後コロナに感染したことが判明したので、当局の指示により、2週間の自主隔離をすることになったとのこと。この週から、患者を診る際に、マスクの着用を始める。

 

311日(水)NY市の感染者数52人(在ニューヨーク日本国総領事館のメールに基づく数字。以下同様)

日に日に感染者の数が増えていって、至近距離で患者を診るのが怖くなってきた。にも関わらず、前に診たことある90歳の患者さんが「腰痛めたから、近いうちに診て欲しい」とのこと。事前に3回ぐらい念を押して、最近ほとんど外出していないことを確認する。この人、1月にも肺炎やってるし、高齢でハイリスクなのに大丈夫かぁ?と思いつつ、どうしても診て欲しいとのこと。予約は金曜日。 

9時、トランプが演説して、13日夜以降ヨーロッパからの渡航禁止を発表。

 

312日(木)NY市の感染者数95人。

ブロードウェー、美術館などが、無期休業を発表。事態が緊迫し始め、相方の周りで、「金曜日の夜から、マンハッタンが封鎖される」という噂がまことしやかに流れ始める。悩んだ挙句、日中の陶芸のクラス、夕方の患者をキャンセル。

 

313日(金)NY市の感染者数154人。

昼、90歳の患者さんを診る(1回目)。この前日まで彼は、まだ老人ホームにいる奥様に毎日会いに行ってたけど、この日、ホームを訪ねたら、面会禁止を通達されたらしい。

 

16日までの予定で、全米スノーボードチームの遠征で、スペインとスイスに行っていた同僚がトランプの演説を受けて、予定を早めて帰国。2週間の自主隔離に入る。私は、彼の仕事に必要な書類等を箱に詰めて、彼の親類が取りに来られるように準備する。

 

NY市長の演説で、マンハッタン封鎖の噂は、デマだとはっきりと打ち消した。地下鉄やバスは、医療従事者の足として欠かせないので、止めることもない、と。公立学校がまだ開いているのは、閉めた場合、学校での給食が唯一の栄養源である子供たちが困ることや、医療従事者の子供達の行き場がなくなることから、躊躇しているところ。

 

相方は、「(住んでいる)マンハッタンから、川を越えてブルックリンに行ってる間に、マンハッタンが封鎖されると、帰って来られなくなる」なんて危惧していたけど、そんなに早く封鎖できるはずもないのに。。でもそれぐらい、事態は切羽詰まっている感じだった。

 

陶芸のスタジオが、16日からクローズになる通知が来る。

 

315日(日)NY市の感染者数329人。

陶芸のスタジオが閉まる前に、やりかけの作品を、キリのいいところまで仕上げる。マスクをして、隣の人との距離を開けて、窓を開けて、細心の注意を払い、ギリギリで仕上げ完了。クローズ中に、家でも作陶できるように、もっと道具や粘土を持って帰ればよかったけど、そんな余裕もなく、仕上げるのに精一杯。

 

NY市長が、翌16日から419日まで、公立学校の休校を発表。

 

この週も、患者の予定が入っていたけど、仕事柄、患者と至近距離で、1時間の治療をするのは感染の危険が高すぎると思い、同僚であるオーナーに、クリニックの閉鎖を提案。翌16日に全患者にメールを送信。

 

もうひとつのクリニックは、この週も開けていたので、オーナーに一刻も早く閉めるように説得し続ける。結局、この週いっぱいで閉めた模様。

 

316日(月)NY市の感染者数463人。

317日(火)NY市の感染者数814人。

318日(水)NY市の感染者数1871人。

 

319日(木)NY市の感染者数3615人。

昼、90歳の患者さんを診る(2回目)。金曜日に私の治療を受けて以来、外出していないとのことで、感染しているリスクは少ないと見て、事前に体調を確認した上で、治療。これが、休業前、最後に診た患者。彼は、その翌週にも予約を入れたい感じだったけど、私の方から、断ることにした。

 

320日(金)NY市の感染者数5151人。

 

321日(土)NY市の感染者数7530人。

朝スーパーに行くと、入店制限をしていて、入るまでに長い列 (約45分)。それも、店の外でみんな2mずつぐらい間隔を開けて、並んでいる。マスクする人もだいぶ多くなったように見受けられる。入店するときに、ゴム手袋を渡され、使う前にカートを備え付けのウェットティッシュで拭く。店の中は、入場制限してるだけあって、混み合わない。普段は、レジの人が商品を袋に詰めてくれるけど、今は、スキャンするだけで、これからは、自分で袋に詰めることになる。

 

322日(日)NY市の感染者数9654人。

323日(月)NY市の感染者数12339人。

 

 

324日(火)NY市の感染者数14904人。

この日、朝9時以降、NY市のレストランは、テイクアウトとデリバリーのみになる。必要不可欠な業種以外の全業種、自宅での仕事が義務付けられる。

 

以後、自宅待機中。今週でちょうど4週間ほど。

411日(土)NY市の感染者数98308人。

今日のご近所の様子。



 

NY市長が今日、公立学校を今学期いっぱい閉鎖することを発表、つまり、次オープンするのは、9月になるってこと。

今のところ、自宅待機勧告は4月いっぱい出てるけど、少なくとも5月半ばまでは延長される見通し。私みたいな、濃厚接触が避けられない職業は、おそらく6月ぐらいまでは、仕事に戻れないんじゃないかと思う。

 

自宅待機中でも、幸いなことに結構やることがたくさんある。

先週までは、相方の分まで、せっせとマスクを手縫いする日々。

外出るときは、帽子かぶって、マスクつけて、ゴム手袋して、ときにサングラスして、「さて、今日はどこの銀行強盗に行きますか」みたいな格好。。。

散歩は、ほぼ毎日。歩道を歩くとき、人とすれ違うときには、(特にマスクをしていない人の場合は)2mぐらいの距離を開けるように気をつけて、狭い道の時は、相手が通り過ぎるまで待つ。

 

平日は、週3回、オンラインのヨガやピラティス。掃除や洗濯などの家事。週に1回ほど、スーパーで食料品の買い物。

2週間に1回、オンラインの陶芸のクラスに参加。

ランチの後は、オンラインでPT関連のクラスを取り、気がつけば夕方。

7時になったら、急に外が騒がしくなる。人々がベランダに出て、医療従事者や最前線で働いてる人への感謝を込めて、拍手喝采が2分ほど続く。私も窓を開けて、拍手。

 

週末は、家にある粘土で陶芸したり、本を読んだり、映画を観たり。溜まってるアイロンがけをしたり、料理をしたり。観たい映画リストを作って、ひとつずつチェックしていく日々。

 

普段、やる時間がなくて、後回しにしてたことを、ゆっくりできるいい機会です。

幸いにも、四六時中一緒にいる相方と、派手な喧嘩することもなく、家事など協力しながらやっています。

 

まだしばらく、こんな状況が続きそう。

何年かあとに、このブログを見直して、「あの時は大変だったなぁ〜」と思い出す日が来るんだろうか。まだ先は見えないけど、今、できることをするのみ。。。