超久しぶりにブログ書いてみる。

 

アメブロってまだちゃんと稼働してるのかも分からないし、今時はみんなnoteとかを使っているのかな?でもリハビリ的にとりあえず書くわ。

 

で、記念すべき復活第一弾はゲーム「ウマ娘」について。

以前スマホのゲームアプリでウマ娘なるものが流行っていると聞き、どんなものかと見てみた。元々日本のオタク系コンテンツで戦国武将や戦艦なんかを萌え系のアニメキャラにしたてて「女体化・擬人化」するというジャンルがあるのは知っていて正直、実に気持ち悪いなと感じていた。ウマ娘のアプリ紹介を見てみた時も「なんだこれ気持ち悪りいな。女の子のレースかよ。」って思いすぐにソッ閉じしたのだった。

 

しかしその後しばらくたち、すごく暇な時に、そんな流行ってるものなら食わず嫌いせず、一回どんなものか試してみるべきではないかと思い立った。つまんなければアプリを削除すればよいのだから。と、暇つぶしで始めたウマ娘だったが実にすごいコンテンツだと気づき瞬く間に完全にハマった。

やってみてすぐ印象が変わったのは、熱血スポ根ゲームだった事だ。

 

どんなゲームか簡単に説明すると、プレイヤーである自分は、ウマ娘レース界のエリートを育成する学園にプロのトレーナーとして所属している。そしてウマ娘をスカウトして3年間かけて育成し、ライバル達と競ったり友情を育んだりしながらトレーニングを重ねて目標レースを戦っていくというゲーム。やってみると単なる萌えキャラゲーではない。それぞれのウマ娘が悩みや挫折を経て成長していく熱血物語が主軸になっている。

 

そして何よりも競馬に対するリスペクトや愛情を感じさせる、徹底した作り込みが凄いと感じた。登場するレース場は実在のものがしっかりと再現されておりレース場毎に有効な作戦や有効なキャラクターが変わってきたり、それぞれの実際のコースレコードが最速タイムとなるようにこっそり調整してあったりするなどシステムが実に考え抜かれ作り込まれている。そして実在した名馬を擬人化したそれぞれのキャラクター。造形はもちろん、育成上のストーリーや性格づけに実在した名馬達の逸話や性格などが反映されていて、時には色濃く時には隠し要素的に使われていてキャラ造形の厚みを生みだしている。コアな競馬ファンになればなるほど「あ、このセリフはあのレースのあの時の逸話のやつだ」などといった楽しみ方の幅が有る。実際私も育成後にモデルとなった競走馬の話を掘ってそのドラマ性に驚き、更に感情移入してゲームをするような楽しみ方をしている。

 

競馬は単に馬さんが駆けっこする競技ではない。馬界の中でもアスリート中のアスリート達が集まって能力の限界を競い合う究極の競技だ。馬は例えば、猛獣に襲われて逃げる際にパニックになり、全力で走り続け体力の限界になり心臓破裂で死んでしまった事例があるような、身体の限界を超えて走ってしまうこともある動物。競馬はその馬の中でもトップアスリート達が自らの身体を破壊するほどの凄まじい走力の限界を競い合う。実に体重500㎏前後の巨体が時速60キロ前後のスピードで、もしも馬同士がぶつかればたちまち命を落とすこともありうるような極限状態のレースを行う過酷で究極的な極限競技が「競馬」なのである。

そんな極限の競技であるからこそ、数々の名勝負や伝説の名馬が生まれたり魅力的な逸話が語り継がれており、それらの名馬や逸話を擬人化しゲームでエンターテイメント的に再現しているのがウマ娘なのだ。

 

かつて日本競馬界にサイレンススズカという伝説的名馬がいた。

 

競馬というのはスタートからゴールまでただ漫然と走るのではない。レース場にもよるが例えば1.6㎞~2.4kmといった長い距離を限界スピードで走るため、ほとんどの場合スタート時からしばらくはお互いのポジショニングを意識してスタミナを温存しながら走る。

そして徐々にスピードを上げながら自分の有利なポジションをとり合い、最終的にトップスピードに達して他の馬と差しつ差されつしながらゴールに突入する。身体が壊れる限界ギリギリのスピードで走る競馬において、レース場のような長い距離を最初から最後まで全力で走り続けることはできない。

もしも最初にトップスピードで走れば必ず後半はスピードが落ちて後方の馬に抜かれる。最初から先頭をとってそのままゴールすることを目指す「逃げ」という作戦があるが、これは後半自分のスピードが落ちることを大前提にして、他の馬の終盤の追い上げが間に合わないくらいの距離を最初に稼いでおこうという作戦だ。

 

しかし歴史ある競馬界において唯一、サイレンススズカはこの常識から外れた馬だった。スタートからトップスピードで先頭を走り続けそのままゴールを駆け抜ける。他の馬がようやくトップスピードに達しても距離が縮まらないまま、終盤なのにむしろ更に加速して後続を突き放してゴールを駆け抜ける。「逃げて差す」と言われたこのレース運びは他の馬では決して真似できないものだった。「異次元の逃亡者」の異名はまさにサイレンススズカに相応しい。

日本で最も多くの名馬に騎乗してきた武豊は歴代最強馬を問われても「それは答えないほうがロマンがあるでしょう」といって決して答えない。しかし武は唯一この質問に対し「ディープインパクトから逃げきれるのはサイレンススズカだけ、サイレンススズカを差せるのはディープインパクトだけ」と答えた事がある。これは彼の本当の気持ちを表しているだろう。当時、海外の競走馬雑誌において、中距離レース世界最強はサイレンススズカではないかと取り上げられたりもしていた。

 

競馬界の歴史をどれだけ塗り替えていくかと期待されている中、サイレンススズカを突然の悲劇が襲う。1998年11月1日秋の天皇賞。このレースをこの年の最大の目標としていたサイレンススズカは、1000m時点で57秒4という当時の常識を3秒も上回る超ハイペースで他の馬を圧倒的に引き離し更に加速していった。どんな大記録が生まれるのかと観客が期待する中、突然サイレンススズカは止まる。左前脚粉砕骨折。その凄まじすぎる走りの負荷に骨自体が耐えきれなかったのだろうと言われている。

馬は脚を動かすことによってその巨体内の血流を促す。歩けなくなった馬は脚の血流が止まり壊死を起こし最終的には激痛に苦しみながら死に至ることになる。そのため回復が見込めない故障をした馬は安楽死を施されることになる。サイレンススズカは医師の判断によりその場ですみやかに安楽死処置となった。

この時の場内はまさに水を打ったかのように静まりかえり、塩原アナウンサーは「沈黙の日曜日です」と絞り出すように実況した。この歴史的な悲劇は今でも競馬ファンの間で語り継がれており、もしもあの時にサイレンススズカが故障しなかったら競馬界に様々な伝説を残していただろうに…というかなわぬ夢を誰もが抱かずにいられない。

 

ゲーム「ウマ娘」内において再現されたサイレンススズカは、ただひたすら走ることが好き、先頭を走る自分だけの景色を見たいという夢を追い求める少々ストイックな少女として描かれている。人懐っこく寂しがりやだが他の馬との交流が苦手だった史実の馬の性格が反映されているのか、他のウマ娘達にとって究極の走りを体現するあこがれの存在として、本人の自覚はないまま微妙に孤立していたりする。(素直を絵にかいたような主人公キャラとの交流でそのような状態も変化していくのだが)

そしてゲーム内のサイレンススズカは運命のレース秋の天皇賞を迎える。プレイヤーである担当トレーナーは不穏な雰囲気、嫌な予感をなんとなく感じながらもスズカをレースに送り出す。あの悲劇を生んだ第3コーナー手前、スズカは真っ暗な世界で足をとられ身体が動かなくなる。本来の史実ではここで起きた悲劇の瞬間。しかしゲーム内ではもう一つ別の世界線の扉が開く。止められていた足は動きだし、スズカは先頭でゴールする。ずっと追い求めていた「先頭の景色」にたどり着いたのだ。(マッドサイエンテイスト的キャラ付けをされている、これまた名馬であったウマ娘アグネスタキオンの「ウマ娘が限界を超えるための薬物実験」によって世界線が変わったという流れで描かれている)競馬ファンがずっと抱えていた、サイレンススズカが故障しないで勝利するもう一つの世界線。ウマ娘はこのifの世界をゲーム内で作り上げ、史実を知っている競馬ファン達の永遠の夢を描き、涙無しでは見られない名場面になった。

 



↑実況プレイ動画の一部抜粋

 

長々と書いてしまったが結局何を言いたいかというと、繰り返しになるが、ウマ娘は単なる萌えキャラ擬人化ゲームの枠に入りきらないクオリティと広がりがあるコンテンツだ。実際に日本競馬界を彩ってきた様々な名馬達、そしてそれを支えてきた競馬界に対するリスペクトに溢れている。それ故に世界観が深みを作っており、そこにおっさんでもハマれる要素があるのだ。