思いっきりネタバレしますので観てない方は読まないでくださいね。

アベンジャーズ・エンドゲーム観た。パンツとTシャツどちらもマーベル状態を部屋着にしてたりするくらいマーベル映画好きだけど、正直に言う。世間は大絶賛の嵐で興行成績新記録いっちゃうだろうけど、あえて言う。あくまで個人的な感想としてだから反論は受け付けない。ないわこれ。もったいないというのが素直な感想。期待値を上げ過ぎてたのもあるだろうけど、MCUの大きな区切りとしての作品としてはちょっと残念というのが正直な感想だ。

3時間という長い上映時間、これは別にいい。ただ、体感的にその長い時間の90%くらいはエモーショナルなドラマ。ヒーロー達が死んだ人達を思い、後悔してる姿をずっと見せつけられる。
まず、そういう映画が観たいならば他の映画を観る。もっと感動的に人の心情をストレートに描く映画はいくらでもある。普通のちゃんとしたヒーロー映画ならば、ヒーロー達のそういった悲しみや苦しみは大前提として根底に存在し、短いセリフやちょっとしたシークエンスで描くべきものであり、深い悲しみを抱いて日々過ごす様子を延々と見せつけて表現するのは違う種類の映画でやるべき技法だ。もしも映画ダークナイトが、バッドマンが苦悩する様をそのまま映像として表現していたら今のような名作としての評価はなされなかっただろう。この映画はそれをやっちゃってる。小学生低学年が観てすぐ分かるように、悩むシーンを悩む姿で表現する。しかも延々と上映時間の大半を費やして。

そして話の進め方の大切な部分の設定が稚拙過ぎる。アントマンが量子世界から帰ってきてタイムトラベルの可能性をヒーロー達が知り、過去に戻って世界を救うわけだが、肝心のアントマンがこの世界に帰ってこれたのはネズミが偶然スイッチを踏んでくれたおかげというのがヤバイ。世界を救ったのはあのネズミだ。せっかくタイムトラベルができる状態になってもキャプテンマーベルを呼ぶこともせずに、その上でタイムパラドックスは生まれないしタイムトラベルは一回しかできないという謎の縛りルールを作って、なぜか緊急タイムトラベル。いや、急ぐ必要ないやろ行きたい過去に行けるなら。そして今までにないタイムトラベル物が観れるかと思いきや、観せられるのは中途半端なコメディと過去の人達と長々話すエモーショナルシーン。ちゃんと下調べしたりと普通にやってれば死ぬ必要のないブラックウイドゥを無駄に殺すし。死んだらまた延々と悲しむヒーロー達の描写くるし。そして過去サノスが未来に起こることを知るくだりを、なぜか過去のネビュラ「だけ」に未来の自分の記憶が生まれるという謎設定によって成し得るという稚拙さ。もしも俺がプロデューサーなら、全部根本的に練り直せと突っ返すよこの脚本。

そして最も重要なのは、この映画で唯一と言ってもいいカタルシスアクションシークエンスである、最後の決戦シーン。溜まりまくったモヤモヤを吹き飛ばす、最大のカタルシスを期待しながら我慢して観ていて、1つ1つのシーンで小さなカタルシスを感じながらも、なんかモヤモヤが今ひとつ晴れ切れない。だってキャプテンがムジョルニアを使いこなしたり、レディースヒーロー軍団が勢揃いしたりしたシーンで、ウォーッと気持ちが上がったり涙が出そうになっても、その後あんまり敵を圧倒できてない感じのまま短いシーンで切り替わり、今ひとつ気分が突き抜けないまま萎んでいく。そして最後にアイアンマンが死んで、そのまま気分をドン底に落とされちゃって戦いが終わるのだ。それからラストシーンまでも今ひとつ。アイアンマンの死にフォーカスするためにブラックウイドゥやヴィジョンの葬式はせずにセリフだけで終わらせるし、キャプテンアメリカはタイムトラベルで過去に戻って本来の彼の人生を過ごして幸せになるわけだけど、そこは先にアイアンマンやブラックウイドゥやヴィジョンが死なないようにタイムトラベルしろよキャプテン、みたいな。最後に諦めて投げ出しちゃうんかいっていう。

ヒーローSF物に対して設定の甘さや矛盾、ストーリー展開のご都合主義を批判する無粋さは理解してる。フィクションをフィクションとして楽しむ素養くらいはあるつもりだ。しかしMCUという映画界初の試みの成功例として、個人的に大好きな長い長いシリーズの最後を飾る映画として、インフィニティウォーのモヤモヤをそのまま最後まで引っ張り続けて終わらせるようなこの作り方は、どうにも物足りないというかもったいない。ドキドキワクワクのカッコイイ見た事の無いようなアクションシーンを楽しませ、時折それぞれの切ない思いを滲ませながらも苦心を重ね、最後にカタルシス大爆発の戦いがあり、ヒーローの感動的な死によってようやく勝利し、残された人々が波を拭き次への希望を胸に歩き出す、そしてヒーロー達の意思を継ぐ者達の登場を匂わせて終わる。そういう映画を期待しちゃってたんよね。チーズバーガー好きな娘はアイアンマンを継ぐだろうし、弓の上手な娘はホークアイを継ぐだろうし、肝心のキャプテンは翼男になっちゃったから次世代は女中心のチームになるんだろうね。そしてこれらの壮大なシリーズの映画の幕をひくストーリーの中で一番のMVPは偶然スイッチを踏んでくれたネズミちゃんなのであったというね…それはいいけど、今回は期待MAX状態で映画館に行ったから、なんかちょっと残念でしたって話ね。