映画の紹介。
その映画は、
今更ながらの「ブラックスワン」!
すごい映画だって話は聞いてたけど
最近、重い映画をじっくり観るのは気が進まなくて、
ずっと未見の状態だった。
でも、実際に観たら
なんでもっと早く観なかったんだ!!
って感じ。
途中から一気に引き込まれて、オチとか途中で読めたけど
そんなの関係なく楽しめ、感動した。
完全に俺の生涯の映画ベスト10候補にノミネート。
ちなみに、ノミネート作はあと「マルホランドドライブ」だけ。
まだ2作品のみwww
まず、俺の中でレオンとかスターウォーズとかのイメージしかなかった、ナタリーポートマンが凄かった!
こんな凄い女優だったんだって、驚いたよマジ。
聞けばアカデミー主演女優賞をこの映画で獲得したんだってね。
納得っす。
以下、ネタバレ込みで書くんで、
観た人だけ読むように。
クラシックバレェの舞台「白鳥の湖」の主役に抜擢された純粋でまっすぐな女が、
一人2役の内、繊細で純粋な愛に生きる白鳥はうまく演じられるものの、
激しく淫らで魅惑的な黒鳥を上手く演じることができず、思い悩み精神的に崩壊していく・・・
ってな映画。
この映画のポイントの一つはあの母親の存在。
自分が挫折したバレェへの夢を娘に託し、娘も母の夢を実現する事に青春を捧げている。
まさに「過干渉」による、親の娘支配の構図が根本にある。
母による過干渉によって成長した娘は、他者とのコミュニケーション能力が発達しなかったり
自己主張や感情表現に対して心理的抵抗感が根付いたりする。
このナタリーポートマン演じる主人公がまさにその状況。
母親の期待に応えて白鳥の湖を演じきろうとするも、
まさに母親の呪縛によって、激しい感情表現ができない。
しかし実は、彼女の持つ激しい感情は無意識の心の中に沸々と存在している。
それが、ところどころで表出している描写もある。
例えば、白鳥の湖の主役をゲットし、トイレに駆け込んで母親に報告をした後。
トイレの個室を出ると、外にはでかでかと「このアバズレ!」的な落書きがしてある。
彼女は、蹴落としたライバルが書いたと思い、ショックを受けるわけだが、
最後までこの映画を観た人はお分かりの通り、これは彼女が自ら、無意識の内に書いたもの。
色仕掛けまがいの方法で役をゲットしたという自己嫌悪、母親のために行動する自分への後悔が表出した瞬間だ。
そして彼女は、母の制止を振り切ってライバルとの夜遊びに出かけ、
その夜以降、母からの干渉の完全な拒絶とともに、
本来思春期までに形成されるべき、一人の人間としての独立した自我を急速に得ることになる。
しかし同時に、それによって、今まで心理内に分離して存在し、心の奥深くに隠されていた(たまに表面に出ていたが)激しい感情を持つもう一人の自分が、本来の人格と分離したままの状態で頻繁に表出するようになっていく。
この過程が映画的には精神崩壊の過程として描かれている。
幻覚的な映像表現で、実に怖い。ホラー映画とかよりも怖い。
クライマックス、白鳥の湖の舞台本番。
白鳥と黒鳥の一人2役を、まさに完全に分離した2つの人格で、完璧に演じきる。
その後のラストはかなり賛否両論らしい。
でも俺は、これをハッピーエンドと捉えたい。
最後に客席の母へ視線を向けるシーンは、彼女が母からの完全なる心理的独立を経た後の、フラットな心理状態に加え母そのものへの本来の無償の愛をも感じさせる。
そして、役を完璧に演じきった最高の至福の状態のまま彼女は逝く。
これら最高の結果は、彼女にとって命と引き換えでなければ得る事はできなかったものなのだ。
・・・ていうのは俺の勝手な解釈なわけやけどね。
この映画、観る者によって色々考えさせられる、実に見ごたえある久々の傑作でした。