アメリカの大手人事コンサルティング会社・タワーズペリン社が発表した

「各国における従業員のエンゲージメント」という調査結果は日本人にとってショッキングなものだった。

「エンゲージメント」っていうと難しいけど、

つまりは「仕事に対する総合的な意欲」みたいな感じね。


この調査によると、日本人で仕事に対して「非常に意欲的」だと判定されたのは、

なんと2%!!

調査対象となった16ヵ国で最下位!

逆に「意欲的ではない」とされた日本人は41%もいて、

インドに次いで16ヵ国中第2位の高さ!

2011年国際競争力ランキングで26位の日本の、自信の無さが現れているのか・・・

コップの70%に水が入っているのを見て「30%足りない」と感じる、

完璧を求める国民性が、現状に対して感じてる不満が反映されてるのか・・・


確かにそれもある。


しかし実は、日本人独特の仕事への意識を形作っていた、

会社と従業員との関係性の変化の影響が現れているという面が見逃せない。


同じタワーリング社の調査で「管理職の質」に関しても16ヵ国中最下位。

日本企業の管理職は、部下のモチベーションを上げるのが16ヵ国中で一番下手という調査結果だったのだ。



日本はかつて、終身雇用制を経済の原動力として世界に君臨した。

1991年、1992年には国際競争力でもアメリカを抜いて1位で

まさに世界のトップにたっていたのだ。

それが、規制緩和によって人材派遣が導入されることにより崩壊。

会社は社員の一生を面倒見る、その代わりに社員は会社に忠誠を誓うという形態が崩れ去った。


「成果主義」というシステムが、管理職がその内容をよく理解できてないまま導入され、

単なる人件費抑制のためだけに使われることとなった。

本来は従業員のモチベーションを上げるためのシステムであるはずだが

今までの会社の運営方式は変えないまま導入したため、

中身の無い、外枠だけの、賃金評価の手段としてしか使わなかった。


ここで日本の管理職の頭の中がガラッと変わればよかったのだが

自分達がやってきた経験や、仕事をしてきた環境の範囲内でしか想像力が働かない。

だから、社員のモチベーションを上げる事がうまくできない。


かつての日本では、会社への忠誠の元、会社の利益になることを第一に考えて働くことが当然であった。

そうすることで会社は自分に対して報酬をくれていたし、出世もできたし、定年まで働けたのだから・・・

しかも、会社全体のための個人という考えが大きかったために、

実は業績に対する責任の所在が欧米企業に比べて、かなり曖昧だった。

業績が悪いからといって、すぐにクビになるわけではない。

大きな失敗をしたからといっても、出世には響いたが定年までは働けてたわけだ。

社員は、一所懸命に会社のために働く代わりに、会社に甘えることもできる環境だったのだ。


そのような環境で育ってきた管理職が、

いきなり「成果主義」という言葉の響きだけで部下の育成を始めたのだからうまくいかない。

結局は目標達成に対して、パワハラまがいの叱咤をするか、完全に放任するかしかできないのだ。


実は、こんなもんでモチベーションは上がらない・・・

だって会社のために闇雲に働いたって、その人の人生を会社が面倒見てくれるわけではないのだから・・・

目先の賃金や目先の出世だけでは、本当の意味での人のやる気なんかは出てこないのだ。



本来の「成果主義」とは、従業員のモチベーションを上げるためのものと書いたが、

具体的な運営方法としては、部下一人一人の将来的なキャリアプランを段階的な目標として明確にし、

それを達成していくための方法を仕事内容と業績目標として落とし込み、

設定した業績目標をコミットメントして、そのコミットメントに対して責任をとらせる。


つまり、今求められるべき管理職の仕事は、まずは部下一人一人と徹底的に話し合うことである。

会社側の利益や方針と、その部下の個人的なキャリアプランと業績目標とを

それこそ徹底的に摺り合わせ、調整して、完全に部下が納得・理解した上で仕事ができる環境を作ることだ。


管理職のことを、マネージャーという。

芸能人とそのマネージャーというのもあるが、実は管理職のマネージメントというのは

芸能界におけるマネージャーと同じように考えるべきなのだ。

歌手は、決して事務所が儲かるために働くのではない。

事務所も売れない歌手を一生面倒みるために存続しているのではない。

その歌手が働きやすい環境を作ったり、スケジュールを管理したり、

良い仕事をとってきたりするのがマネージャーの仕事だとしたら、

今の日本企業に求められる管理職がするべき仕事と全く同じである。


部下が納得して仕事ができるように徹底的に話し合い、

仕事がしやすい環境を整え、業績を上げられるようにサポートをする。

これが全てだと言っていい。


中国に進出する日本の企業は、特にこの要素が大切だと思う。

日本の若者達の仕事への意欲を削ぎまくったのと同じやり方の場合、

中国人相手では更に輪をかけて、絶対的に通用しない。


中国人と一緒に仕事をしていると分かるが、

仕事に関しては、本当に優秀な人が多い。

日本人のように、会社や他の社員に対しての精神的依存が無い分、

余計に仕事のやり方に鋭さを感じる。


そんな中国人スタッフの管理は、「委任型リーダーシップ」に限る。

会社の方針と沿った形でのキャリアプランを元に、

なるべく自由な発想で仕事ができる環境をつくり

(もちろん不正などの発生が無いような厳しい管理システムは必要)

部下の自己実現的な目標達成の手助けをする事に徹する。


中国進出の際、避けては通れないスタッフ管理の問題。

実は彼らのヤル気をいかに引き出すかを重視するべきだというのが私の考え。



日本も実はこのようにしていくべきなんだけどね。

それが無理なら終身雇用制に戻すべき。