〝一日一日、藍と大事に幸せな時間を積み重ねていきたい。真っ白く消えない雪のように〟
〝うん。見失ったっていい、どんな千歳も愛してるよ。迷うときは一緒に迷おう。泣くときも一緒にいよう。千歳が俺と生きたいって想ってくれることが幸せなんだからね〟
〝星だ。本田さんはやっぱり星だ。抱きしめたいのに届かなくて遠い。それでもぼくのなかで誰よりいっとうきらきらしている〟
〝愛してるよ紗幸。ぼくはきみを最後の恋にする〟
『〝あめの帰るところ〟〝君に降る白〟〝星を泳ぐサカナ〟の番外編に加え、幻の短編〝ココロ〟を収録し、読み応えバッチリな豪華な作品です✨
朝丘先生の作品に出逢いまだ1年たらずでありますが、こうしてまた本の中で生きる彼らの物語を読むことができ、とても嬉しいです。
どのお話も糖度高め、愛しさが溢れる言葉の奔流に胸が詰まり、読み進めるごとに温かさと切なさが身体を貫き、過ぎ去っていきます。
恵一と藍、能登と千歳、裕仁と優太郎。
それぞれの物語で、印象深かったもの。
恵一と藍
〝裏切った人も、失ったものもあった。それでも2人で築いてきた幸福の先にあったのは、決して孤独ではない〟
何かを犠牲にしてでも掴み取った恋、幸福。その先には孤独が存在しない幸せな未来。ずっと一緒にいたいと思い合う、2人を表した素敵な言葉でありました。
能登と千歳
この2人のお話は本当に心が泣きます。
2人のやりとりってなんでこんなに切なくて愛しいのでしょう!?
何かが胸から込み上げてきます!
千歳の手紙を読んだときなんかもう!
〝……ああどうしよう。この人が好きだ。好きで好きで怖い。〟
〝この子に何度恋をして、どれだけ愛しても、一生足りない気がする〟
能登にしても千歳にしても、こんな風に想い合える人と出会えた幸福、一度は失ってしまった愛の再生、降った雨が広大な海へ還っていくように、2人の想いも同じ場所へと還っていく。
カバーデザインのような温かで安らかな愛をありがとうございます。
裕仁と優太郎
この2人のお話が私的には1番糖度が高かったです!
ラブラブっぷりがMAX!
裕仁の面倒臭い独占欲に加え、優太郎ってこんなにエッチなキャラでしたっけ!?って驚き。
優太郎がしっかりしていて、そんな優太郎に支えられてる裕仁が萌えます!
〝……ああ、もう本当に、この人しかいらない。この人を苦しめてまで守りたいものに、どれほどの価値があるんだろう。なにもかもくだらなく思えてきた。ばかだ。本当にばかだ。〟
〝ばか野郎、いますぐ監禁しろっ……誰ともしゃべるなっていうならしゃべらないし会わない。それで裕仁さんが安心してくれるなら幸せで死ねるからっ〟
優太郎の言葉ひとつひとつにどうしょうもない想いや恋情、なかなか裕仁に伝わらないもどかしさなどが含まれていて、心に響くものばかりでした。
裕仁もなんだか少しは大人に成長していてホッとしました✨
そして〝ココロ〟の紗幸と永瀬。
繊細、共有、心、喪失、願い、明日。
愛する人を喪う痛み。お互いを理解し合えていた大事な人。そんな人を失ってしまったら、紗幸のようにどんな手を使ってでも取り戻そうとするでしょう。歪な結果となっても。
愛する人の死別は、やはり悲しみ以上に胸にポッカリ空いた穴の虚無感。それを埋めるために紗幸がとった行動はさらなる虚無感を生み、愛した永瀬はもういないのだという現実を突きつけられる。
この2人の恋の結末はとても悲しいものであるけれど、永瀬にしてみればいつまでも自分に囚われ、愛する人が苦しんでいる方がずっと悲しいと思う。そして目を逸らしていたそのことに気付き、前に進んだ紗幸。
本当に涙がポロポロです。
短編でありながら、短い文章の中に色々なものが詰め込まれた素晴らしい作品でした✨』