旧ジャニーズ事務所における性加害問題で広く知られるようになった、子供への性加害。
男の子でも被害者になるんだ、と驚いた人も多かっただろう。
売名だとか、嘘つきだとかそういった反応も多かった。
だが、実際は残念ながら珍しいことではない。
限られた子供だけが被害に遭うわけではないのだ。
親には言えなかったけれど、私も露出狂に遭ったり、電車内の痴漢、デパート内で陰部を押し付けられたりしたことがある。
今はSNSを入り口にした性犯罪が増加している(26頁 警察庁統計より)。
決して、関係ない世界の出来事ではないのだ。
加害者の頭の中は、認知が歪み過ぎていて腹立たしい。
「相手が嫌がっていないと思った」は圧倒的支配関係の中では加害者に都合のいい言葉でしかない。
113頁にあるように、刑法改正は本当に画期的である。
少しでも辛い思いをする子供が減らせるよう、実際に動いてくれた大人がいることがほんの少しでも助けになるのなら。
本書の良い点は、被害者支援は言わずもがな、加害者の治療、また加害者の体験が収められていることである。
正直なところ加害者憎し、に動きがちな私の心に一旦歯止めをかけ、矯正、再犯防止という犯罪抑止とは何かを思い出させてくれる。
心情的なものと、現実とをみて、より良い社会を作るにはを考えることは困難が多い。
けれども、それを実践し続ける著者含めた多くの人々に敬意を表するとともに、
私のような市井の人々も皆で考え、実践することで、少しでも苦しむ人が減ることを希わずにはいられない。