時は室町時代。
8代将軍足利義政の世である。
世は乱れに乱れ、大名は戦に明け暮れ、人々は度重なる天変地異にも翻弄され、その日一日を過ごすので精一杯。
しかし、将軍は自らの殻に閉じこもり、作事、作庭に明け暮れる。
一歩外に出れば、餓死した民が山ほどいるというのに。
そんな中、絵師の土佐光信は怪異に出会う。
あるものは恋焦がれ、あるものは憎み、そしてあるものは…神、あるいは鬼。
人の望みが世を作る、と怪異は知らせる。
我らは望みがあって生まれるものぞ、と。
だとしたら、なぜ穏やかな世にならぬ?
主らがこの世を地獄に変えているのでは?
怪異が語ることと、それを裏付ける人々の行動には寒気がする。
それでも、光信は何かのために描き続けるのだろうか。
理想だけが現実を変える力がある、とは後世の偉人が述べた言葉である。
悲しみの最中にはこの言葉は何の根拠もない言葉に聞こえるかもしれない。
だが、この言葉に一瞬でも希望を感じられるなら、小さな力を繋いでいけるのではないか?
悲しい余韻の中でも、私は希望を繋ぎたくなった。