歴史に学ぶ


 賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶという。

 経験に学ぶとはどういくことか。

 自分の成功体験や失敗体験に基づいて人は考え行動する。成功体験
は自分に最も甘美であり、同様な成功を求め、繰りかえす。
成功体験を墨守して矮小になり、その後を持ち崩したりする例は多い。
また失敗体験にこり、再挑戦せずに視野狭窄に陥る。
これが、愚者は経験に学ぶということであろう。

 さて、歴史に学ぶとはどういうことか。

 塩野七生さんは、「ローマから日本が見える」の中で「歴史とは人間
である」として次のように言っています。
「どんな人間であろうと、自分の一生の中で経験できることは限られて
います。
たとえ政治家になって大きな権力を握ろうとも、その人には芸術家と
しての人生は体験できない。
努力に努力を重ねて世界的な大企業のトップに上りつめても、そこで
経験できることも、主としてならば企業人の人生でしかない。
だからこそ、私たちは映画を観たり、本を読んだりする。そこには、
自分が体験できない種々様々な人生が語られているからです。」

 また、哲学者の竹田 青嗣さんは「自分を知るための哲学入門」の
あとがきで次のように述べています。
「文学のよいところは、それを深く味わう力があれば、優れた作家たちの
人間に対する機微深い視線を追体験できることだろう。
読者はひとりの-私-であることから離れて、いわば複数の-私-を
如実に生きることができる。それがどれだけ人間を聡明にするか
いうまでもない。」

 すなわち優れた作家による作品を多く読み、作者の目を通した主人公
の人生を追体験したり、作家の込めたメッセージを味わうことが、
他の人生を学ぶということである。
作品のテーマが歴史的事柄や歴史上の人物なら、学ぶものは「歴史」
ということになる。

 楽しく本を読み感動を、その後の人生に活かしていくことが、
「賢者は歴史に学ぶ」ということと解してよい。

 でも、本当の賢者は、歴史と経験の双方から人生の生き方を学んで
いるのではないだろうか。
経験をおごらず、経験にひるまず、謙虚に学んで。

 それにしても、なでしこジャパンは凄い、WCUP優勝!!

 歴史と経験に学んで、歴史をかえました。