琵琶湖のおもいで20
ほたる狩り

 「ほー、ほー、ほーたる、こい。」
「こっちのみーずは、あーまいぞ。」
「あっちのみーずは、にーがいぞ。」

 ほたる狩りをしていたのは、小学校低学年までだったろうか。
蒸せるような熱い夜、近所の子供たちが誘い合ってほたる狩りをした。
遠近から「ほー、ほー、ほたる、、」の声が聞こえてきた。

 ほたるを狩るのには、菜種の茎を使った。
黒い小さな種を取ったあとの茎を乾燥させ、パサパサになったものを
束ね、竹の棒の先に穂のように付ける。

 ほたるを狩る直前に、その穂を小川に浸し、行き交う光の中めがけ
ゆっくり振る。
いくつかのひかりの点が、穂につく。

 ほたるは独特の匂いがした。
長く蛍に触れる機会がないので、その匂いを形容する言葉は出てこないが、
なんだか怪しげな匂いで、独特であった。

 大きな蛍を数匹を水で濡らした草を入れた虫かごに入れて持ち帰った。
持ち帰ったほたるは、家族の目を楽しませたのち、寝間の蚊帳の中に放す。
蚊帳の中でほたるの光を見つつ寝るのが嬉しかった。

 翌朝、目が覚めると、ほたるの姿はどこにもなかった。
私が寝た後、ほたるは解放されていたのだろうと思う。

 蛍の宿は、川ばた柳
 柳おぼろに、夕やみ寄せて
 川のめだかが夢見るころは
 ほ、ほ、蛍が灯ともす