バーチャル・リアリティの影

脳内汚染 岡田 尊司

 「画面の視野角が20度以上になると映像が第一人称の認識
をする。精神年齢の十分でない子供の場合、これへの注意が
必要である。」との廣瀬通孝さんの警告の記事を読んだことが
ある。
わが家の子供が小さいとき、これを考慮し、テレビや映画の
見せ方や内容に注意を払った。

 さて、「脳内汚染」は、人間がテレビゲームに没頭する
ことの危険性・害についての警告書である。若年層のゲーム型
犯罪が頻発している、これは世界的に共通な現象であるという。
IT社会に生きるわれわれが直面している問題は、多量な情報
による心の中(脳)の汚染なのだとの警告している。
本書には、事件の実例とその背景の解析やフィールド調査からの
分析が示されている。

 著者は警告する、「6~8歳までの段階では、現実と仮想の
区別はまだ曖昧である。だが、9~10歳頃から両者がきちんと
区別されるようになり、仮想に対する批判的な眼も育ってくる。
ところが、10代半ばになっても両者の境目が曖昧で、仮想で
学習したことを、そのまま現実だと鵜呑みにしたり、現実の中
でも実行してしまうことが頻発している。それは、年齢相応の
現実感の発達がそこなわれているということである。」

 「その一つの要因が仮想現実世界のゲームである。攻撃的な
行動は「学習」されるだけでなく、ゲームという仮想的な訓練に
よって、人間に本来備わっている攻撃性を抑制する機能さえも
解除してしまうのである。ただの遊びと思われていることが、
実は、行動の安全装置を外すという深刻な結果を引き起こして
いたのである。」

 「イギリスの研究者らは、テレビゲームをプレイしたときの、
脳内のドーパミン放出を調べ、それが顕著に増加すると報告した。
若者たちが寝る間も惜しんで、何時間もゲームに夢中になる理由
が、これで明らかになった。毎日長時間にわたってゲームする
ことは、麻薬や覚醒剤などへの依存、ギャンブル依存と変わらない
依存を生むのである。」

 大画面TVが普及した今、仮想現実世界のゲームの危険性は
より高くなってきたのかなと思います。ゲーム放任は注意が必要
です。
 また、ゲーム依存気味でやめたいのに止められないひと、
ゲーム依存が「リセット」できるきっかけになる本だと思います。