Self-helpしませんか
脳の入力と出力のサイクルを回す(その5)

 「読み・書き・そろばん」と「コミュニケーション」の「書き」について
考えてみましょう。
 書き:習得した知識を使って出力する能力

 参考書は、「脳を活かす仕事術」 茂木 健一郎と「ロジカル・シンキング」
照屋 華子・岡田 恵子です。

 これは、習得した知識を作品(ことば・文・図)として出力する能力の
ことです。書いて出力することが、脳の入力と出力のサイクルを回すこと
になるのです。「読み」で脳に入った情報は、そのままでは断片化した
ままですが、それを話したり、書いたりの「行動」や「経験」を加える
ことによって、整理され「意味」という抽象概念に交換される。
この抽象化のプロセスを経ることで、他の行動に応用ができる「役立つ経験」
となるのです。

 思っていることがうまく話せない・書けないというのは、脳の構造から
きているのです。すなわち、脳の中では、感覚系(知識を溜める)と運動系
(書く・話すための筋肉を動かす)は直接繋がっていないのです。
まず、入力された情報を一度「話す」、「文章を書く」して、脳から出力する。
それを「聞き」、「読み」することで、思っていることと違うところを確認・
添削修正して再入力します。

 このプロセスが脳の入力と出力を回すことになります。
この入出力を回すことで出力した作品が洗練されるとともに、作品にする
プロセスも磨かれます。
 目標、夢、思い、アイデアなどは、まず、ことば・文・図にして出力する。
これが、目標や思いを具体的な定義として脳に入力(フィードバック)する
ことになり、理解し定着することになる。
これを繰り返し、入出力を回すこと。

 論理的に書く
 さて、書く能力について、もう少し深く考えてみましょう。
相手の心を動かし、説得できる提案書を書いて契約を取りたいと思って
いませんか。そんな書き方があれば、ぜひ知りたいと思うでしょう。
そんな書き方がロジカル・ライティングです。論理的な思考で集めた情報を
論理的な思考で整理して書く(ロジカル・ライティング)ということです。

 第1の要点は、書く前の確認です。
提案書で受け手に伝えるべきメッセージは何か。
メッセージを伝えるコミュニケーションにおいて、次の3つを充たすことです。
①答えるべき課題(テーマ)が明確であること
②その課題(テーマ)に対して必要は要素を充たした答えがあること
③そのコミュニケーションの後に、受け手にどのように反応してもらいたいか
 が明確である

 書く前に確認すべきは、受け手に伝えたい課題(テーマ)何であるのか
自問自答することが大切です。勝手読みによるテーマや自己の思い込みによる
テーマになっていないか再考し、確認することです。
伝え手と受け手で捉えるテーマがずれていたら、何を伝えても意味がありません。
また、受け手の反応の確認も必要です。
反応とは、理解してもらう、判断してもらう、助言してもらう、行動してもらう
ことです。これら受け手に期待する反応によって同じテーマでも、伝える
メッセージの深さや広がりが違ってきます。

 第2の要因は、伝えるべきメッセージが論理的に構成されていることです。
論理的な構成とは、筋道の通った思考で提案書、文章が構成されていることです。
つまり、ある話しや文章が、論証の形式(前提-結論、また主張-論拠)
という骨組みを整えていることです。
その上で、①課題に対する答えとしての結論がある、
②結論を導く根拠があり、この根拠が必要な要素を充たしている(漏れがない)、
③結論が行動を求める場合、行動ができる具体的な解決法が示されている、
の3要素で構成されていなければなりません。
また、結論は、課題の答えであることです。


 結論と根拠の関係および根拠と方法が相互に、
So What?(だから何なのか)/So Why?(なぜそれがいえるのか)といえる関係
になっていることです。
根拠→結論の導きとして、根拠で述べたことが、「だから何なのか」と問うた
ときの結論になっていること。
結論→根拠では、結論からみた根拠が、「なぜそれがいえるのか」の問いの答え
になっていることです。
 また、結論を導く根拠に漏れがないことです。
結論を導く根拠の立て方として3C(Customer:市場、Competitor:競合他社、
Company:自社)、4PやAIDMAなどのフレームワークといわれる視点で根拠に
漏れがないようにすることです。

 方法の具体化とは、何を(What)、どのように(How)、誰が(Who)、
いつ(When)、どこで(Where)、いくらで(How much)を明確に述べるという
ことです。
その際の何をする(What)には、なぜそれをするのか(Why)が問われていなければ
なりません。
方法を述べるとき、5W2Hで具体的に示されているか確認することが大切です。

 第3の要点は、出力物をレビューすることです。
第1と第2の要点を踏まえた出力になっているか見直すことです。
まず、自分で見直すこと。
その上で、助言を得られる人がいるなら、査閲をしてもらい助言をえることです。
第三者による客観的な助言は、自己の思い込みによる勘違いや論理の飛躍や漏れ
に気づかされます。

推薦書&参考文献
「脳を活かす仕事術」 茂木 健一郎
「ロジカル・シンキング」 照屋 華子・岡田 恵子
「シンク別冊 一流の思考力(ロジカル・ライティング)」 照屋 華子
「考える技術・書く技術」 バーバラ・ミント 山崎 康司訳