琵琶湖のおもいで10
はや拾い

 はやは、鮠と書く体長10cm程の魚である。
我が家の父は、趣味と実益を兼ね、はやを投網で捕った。

 夏の夕刻に撒餌をして、はやが集まったところを岸から投網で獲る。
暗くなる前に撒餌のだんごを岸から2~3m程のところへ放り投げる。
この撒餌を50m間隔くらいで5,6個しておく。
はやが集まり、うす暗くなった頃をみはからって投網を打つ。

 こうして獲れたはやを拾うのが私の仕事である。
砂浜ではねるはやを手早く拾い、手さげの竹かごに入れていく。
一回で獲れた数が多いと拾うのに時間がかかる。父はその日の
漁の期待からか拾い終わらぬうちに次の場所へと向かう。
少しの距離なのだが父と離れるのが怖く急いで拾ったものだった。

 沢山獲れると近所の親戚に配るのも私の仕事である。
「おっきになぁ、これ焼いたのが旨いんや、いつもおおきに」と
言われ、拾って配る私も誇らしい気持ちになった。

 はやの白焼きは串にさして干しておき、出汁雑魚としても使っていた。
この淡白な出汁で煮た薄味の賀茂瓜の煮つけは旨いらしい。
子供のころ、野菜の煮つけが苦手だった。