琵琶湖のおもいで3
アイの宅急便

 氷魚(ひお)とは、稚鮎のことで、半透明な魚である。子供のころは、売り声とともに
自転車でうりにきていた。
この半透明な魚をサッと一茹ですると真っ白に変わる。これを二杯酢で食べるのが
琵琶湖の早春の味である。鮎独特の苦みもあり、食い続けることになる。母が「子供
があんまり食うたら鼻血がでるでぇ」といわれ、血に弱い少年は渋々箸を納めたもの
だった。

 さて、結婚して坂東太郎の近くに住んだ。姉から氷魚が宅急便で送られてきた。
ひとつのタッパには、氷魚と大豆の醤油煮、もうひとつは茹でただけの氷魚である。
喜び勇んで真っ白な氷魚のタッパを開けたが、無残にも腐臭が漂っていた、残念無念。
その後、クール宅急便ができ、故郷の味が賞味できるようになったのは、まことに
喜ばしいことであった。クロネコに感謝である。

琵琶湖西岸に住む人たちは、鮎をアイと発音する。