琵琶湖のおもいで2
雄松﨑のコイ

 チリ、チリリリーン、きたコイだ! 心躍る瞬間だ!
京阪神からの海水浴の家族連れが帰ったあと、琵琶湖西岸の雄松崎のある夜のこと。
期待と緊張に竿を握る手に力がはいる、コイだ! この引きはコイのもの。

 鯉を釣るには投げ釣りをする。リールのロックをはずし、錘と餌の団子の重さで竿を
しならせた反発で投げる。湖岸から30~40m沖へ投げ込みひたすら当たり-竿の
先に付けた鈴がなる-を待つ。一晩2~3時間で2匹も釣れれば名人にでもなったように
鼻高々で帰ることができる。
 その釣果には、運だけではなく、餌・場所・風向き・気温などの選択と工夫がいる。
特に餌となる団子には、それぞれの工夫がある。調合する材料はそれとなく教え合う
ものの、混ぜ具合や寝かせ具合は秘密である。

 どこそこの川の先で一尺の鯉を釣ったという話は一両日中には、釣り仲間誰もが
知っている話となる。が、釣り人の名によっては、「ほんまかいな」とつぶやかれた。