琵琶湖のおもいで1
「しま」のモロコ(諸子)釣り

 ガラガラ、学校から帰るとすぐゴム草履にはき替えて缶カラを持ってミミズ捕り。
産卵前のモロコ釣りには、細いミミズが餌に良い。場所は散髪屋の裏、常時、
湯を使っているため下水口の周りはミミズの繁殖場だった。細いミミズを缶カラに
半分ほど取り、泥をかぶせて準備完了。「しま」へモロコ釣りにいく。

 産卵前のモロコは食欲が旺盛で2~3時間の釣りで小さな魚籠は一杯になる。
釣りの仕掛けは簡単なもので三段継ぎの竿、竿より多少長い糸、浮き、しず、針
である。

 昭和30年代後半の近所の琵琶湖の漁師が漁師として喰えていたころ、
湖西の近江舞子の「しま」と呼ばれた船の係留だまりは、モロコ釣りモロコ釣り
の絶好の釣り場ざった。係留中の船や役目を終えた船が水舟になってわずかに
浮かんでいる。それらの船の舳先やヘリを確保して釣り糸を垂らすやいなや浮が
ピコピコ、グゥーと沈み込んでいく。竿がしなり体側に一本黒い線の入った大きな
腹をしたモロコが釣り上がる。季節はぽかぽか暖かい春である。

 「ようけ釣れたのう」と帰り道、声を掛けてくれるおっさんがいた。

「しま」:
琵琶湖西岸、近江舞子にある船だまりを地元の人は「しま」と呼んだ。比良山系
(花崗岩質の山)から流れる急峻な川が花崗岩の石や砂を多量に運びつくられた
天然の入江である。入江の奥の岸には葦が繁り、魚の産卵場となっていた。