オカルト | 今日も定時ダッシュ

オカルト

 「オカルト」の監督である白石晃士氏は、他にも「ノロイ」や「グロテスク」や「口裂け女」といった映画を作っており、これらのタイトルを並べてみるとどれも普通の単語すぎてなかなか検索にひっかからない。それだけ奇をてらわない人なんだと思う。「オカルト」のようなフェイク・ドキュメンタリーの形式は「ブレアウィッチプロジェクト」や「クローバーフィールド」などがあるのだが、不必要にカメラをガンガン揺らしていたそれらと比べて、「オカルト」は非常に見易く、素直に映像が頭に入って来た。カメラマンがプロ(=白石監督自身)という設定は観る者への配慮もあると思う。ドキュメンタリーっぽく見せる=シロートっぽい作り、ではないことを十分心得ていらっしゃる。

 じゃあ何がドキュメンタリーっぽいかというと、編集せずに1シーンが比較的長いカットであったり、何よりカメラに映る役者が、シロートがカメラを前にした時の不自然さをしっかりと演技している所だと思う。この映画の主役である35歳の派遣労働者役の役者さんが、ちょっと頭の薄い風体から社交的でない感じから、なんかもう「ああ、きっとホントにこんな感じ」とスゴい説得力がある。あと被害者の女の子とその母親の吉行由実の顔立ちがほんのりと似ていたり、低予算だとハッキリ分かる映画ですが、気を配るところはキッチリと配っている。

 ハンバーガーの包装紙が机から落ちただけで怖い!とか、主人公が酒に酔ってからんでくるだけで怖い!とか、このあたりは低予算だからこそ醸し出せる恐怖だろう。ちょっとシャマランの「ハプニング」に雰囲気が似ている。主人公の派遣労働者は神の声を聞くようになって少しずつ狂信的になっていくのだが、それとハッキリわかるのは、映画の最後に白石監督から100円を借りていたことを思い出すシーンだった。最後の最後にかつての伏し目がちで卑屈だった主人公を観客に思いださせることで、この男がどのような影響を受けてしまったのか非常に良くわかる演出をしている。

 この映画で一番感動したのは(感動ってのも変ですが)、最後の「向こう側の世界」をしっかり出してきた事で、正直あまりにもチープでシュールなものだから爆笑してしまったのだが、これは非常に大切な事だと思った。「ブレアウィッチ」のように観客の一番興味を持つ部分を最後まで出さないという演出も、殊に低予算の映画では有効なのにそうしなかったのは、映画の内容に対して監督がきちんと落とし前をつける気持ちがあったのだと思う。

こんな人にオススメ:オカルトとホラーの違いが分からない、という人へ。タイトルが「オカルト」なんだからこれはオカルト映画です。