007/慰めの報酬 | 今日も定時ダッシュ

007/慰めの報酬

 シリアス路線で新シリーズを開始した前作の「カジノ・ロワイヤル」の続編として、今作も「告発のとき」の監督でもあるポール・ハギスが脚本に参加しております。しかしおそらくこの説明は順序が逆で、普通に考えればこの二作は「カジノ・ロワイヤル」のリメイクを前提とした二部作として初めから製作されたものだ。そのため、ストーリーの現実世界とのコミット具合は、リメイクゆえに敵の親玉だけ現代的にした前作より、物語全体に現代の問題点を含ませた今作のほうが深い。

 「カジノ・ロワイヤル」の敵はテロリストの資金を元手に利殖を企てるマネーブローカーだった。テロと投資という21世紀の2大トレンド(?)を結びつけたのも面白かったが、「慰めの報酬」の敵はなんとエコ企業!!もうハギスってばステキ過ぎる。やっぱりなーーんか胡散臭いトコあるよねエコロジーって。しかも、表はエコヅラしておいて、裏では一国の水資源を独占し、そこから上がる利権を欲しいままにするという、それなんてウォーターバロン?な設定。「慰めの報酬」は、実際にボリビアで起こった水戦争を大きく取り上げているため、今回の事件はボンドの復讐心があればこその展開というのは承知の上で、MI6がボリビアのテロや水資源を独占する巨大企業に敵対する道理は本来はない。新生007もピアース・ブロスナンのシリーズ同様、冷戦崩壊以降にイギリスの諜報員が活躍する舞台としては無理矢理しつらえた感じは残るのだが、仮想敵国が無くなった現代において、007シリーズはより巨大な、より見えにくい敵を相手にするという覚悟を固めたのだ・・・と思いたい。そのためにポール・ハギスを担ぎだしたのではなかろうか。

 そうはいってもこの映画はエンターテイメントの枠の内にあるものなので、本気で世界に警鐘を鳴らす意図はなく、観客もそこまで求めてないだろう。シリアスな部分を離れてアクション映画として捉えると、冒頭のカーチェイスやMI6の裏切り者を追いかけるシーンなど、アクションの撮り方が総じて見辛くて、「カジノ・ロワイヤル」の観客にストレスを与えないカメラワークと比べるとマイナスなのが残念。007に付き物の世界中を股にかけるストーリーについては、今回は金持ちとビンボーの落差が激しく、そこも世相を反映した意図的なロケーション選択であるように思う。中でもメトロポリタン歌劇場で斬新な舞台装置のオペラを上演するシーンが見られたのは、ちょっと得した気分。

 ダニエル・クレイグの無骨さが魅力のボンドもこの2作ですっかり馴染んだし、今回の敵もいわばトカゲの尻尾であり裏にまだまだ現代的な悪党が潜んでいることを考えると(冒頭で捕らえられたミスター・ホワイトが逃亡してそのままだし)、国家を超えた悪のコングロマリットにイギリスのエージェントはどう立ち向かうのか、今後の展開に期待大であります。けれどもお約束のガンバレルで、右側から歩いて来る姿勢が前首気味でちょっと猿みたいと思ってしまったのはダニエルにはナイショだ。


歴代ガンバレル・シーケンスの総集編。さすがに「慰めの報酬」のはありませんが、「カジノ・ロワイヤル」では歩くシーンを巧みに避けている。

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