最近外国人のYouTubeで日本の新幹線は素晴らしいという内容の動画をよくみかけるようになった。

誇らしく思うが、よくよく自分のことを考えて見れば最後に新幹線のったのがいつだか思いだせないぐらいになっている。

このままでは日本人としてどうなの?と反省し、とりあえず熱海まで新幹線に日帰りで乗ってみることにした。

日本を代表する新幹線といえば、東海道だし、東京から45分、料金も自由席3740円だ。

新橋の格安チケットの回数券なら3150円で買える。



東京駅地下のグランスタで、弁当を買うためツレと待ち合わせをしていた。

美味しそうな豪華弁当を沢山売ってはいたが、駅弁ぽいものはないな。

1階の駅弁屋に移動し、博多名物鶏弁当を880円で購入。旅情を感じるには駅弁は必須アイテムだ。
乗車時間45分なので食べ終わる頃にはついてしまう。

11:27のこだま721号の自由席にのると、土曜の午前中なのでビジネスマンの姿もなくガラガラだ。
2人で3席をしっかり確保。

「こだま」というと、ウルトラマン顔の0系や100系のイメージだったが、今はクレヨンしんちゃん顔のN700系なので性能は申し分ない。



熱海駅を降りて、しばらくホームに佇んでいると、上り下りの新幹線が入れ代わり立ち代わりに目の前を猛スピードで通過していく。

通常の新幹線駅にあるはずの退避線が熱海駅にはないので、「のぞみ」も「ひかり」も通過の際は「こだま」と同じホーム沿いの線路上を走らざるを得ないのだ。

この光景を見れるのは正しく、熱海駅を利用する者だけの特権だ。

ホームの端はトンネルになっていて見ていて飽きない。



熱海駅で降りては見たものの、全く無計画で何処へ行くかは決めていなかったし、土地勘もない。

観光案内所でもらった地図をたよりに、目星をつけ、とりあえず来宮神社へ行ってみる。



30分ほど歩くと京都を思わせる竹林と鳥居が突然姿をあらわす。

一歩踏み出すと異世界に迷いこんだような錯覚をおこす。ここは本当に熱海なんだろうか?



国指定天然記念物でもある、樹齢2100年の御神木「大楠」。全国2位の巨木に認定されているらしい。

本当に全国の木の大きさを調べることができるのだろうか?

この時は疑問に思っただけなのだが、熱海においては本当かどうかなんて些細なことなのだ、ということを後で思い知ることとなる。



弁天岩。岩の上には蛇の彫物、下には巨大な何かの玉子が、何の説明もなく5個置かれている。

何の意味があるのか考えてみるが、そんなことは何の意味もないことを後で知ることとなる。

来宮神社の由来はよくわからないが、あちこちにある巨木や奇岩がパワースポットとなって自然発生的に創建されたもののようだ。



来宮神社を後にして、熱海港へ向かう。熱海港からは初島や大島へ向かう船がでている。

初島へ行くか迷ったが、今回は初熱海なので、ロープウェイで熱海城へ行くことにした。



ロープウェイは往復で700円。一番の自慢は「日本一短いロープウェイです」というアナウンスが流れる。

真面目なのかギャクなのか?

このあたりから勘のいい人は、なんとなく熱海の正体に気づきはじめる。

何にしても、山頂駅の展望デッキから、目の前にひろがる太平洋ををながめながら生ビールで喉の渇きを癒やすのは最高だ。



ロープウェイをおりると、秘宝館、トリックアート、熱海城などの施設が集中している。

熱海城は立派な石垣もあり、昔はどんなすごい御殿様が住んでいたかと思わせるが、実は実在した城ではない。

有名な城の天守閣のいいとこ取りをしたコンクリートの建造物で、この城自体が巨大なトリックアートみたいなものだ。

もっといえば、ディズニーランドのシンデレラ城と同じである。違うのはシンデレラ城は皆偽物と知って行くが熱海城は行って初めて偽物と気づくのだ。

いや、行っても気づいていない人も多いかもしれない。
「どこにもそんなことは書いてないのだから。」

秘宝館は入館しなかったが、いかがわしさがぷんぷん漂う。



熱海城を少し下ると、自殺の名所「錦ケ浦」へでた。

ホテルニューアカオ前の展望台からみると、荒々しい岩肌を削る波と透明感のある海が広がる。

これだけの景観は日本でもそうそうない。




17:00以降通行止めという規制のある道路脇の階段をおりると、さらに海面が近づき、押し寄せる波を見ることができる。

これだけの素晴らしい景観にも関わらず、案内板がないせいか、熱海城に比べて人影もまばらだ。

敢えて、ここには人を寄せ付けないようにしているようだ。



再び熱海城へもどってロープウェイを下るとおりたところにfuuaという日帰り温泉施設をみつけた。

中にはいると大人気の熱海プリンの売店があり、ツレがどうしても食べたいというので買って食べた。濃厚なプリンと砂糖を焦がした昔ながらのカラメルソースがよく会う。

駅前の本店は大行列だがここは好きな時に好きなだけ買える。ショップの前のテーブルで座って食べれるのもいい。食後にお土産に3個追加して買った



プリンを堪能した後はビーチを目指して歩く。



すると、「貫一お宮」像に出くわした。

金色夜叉という小説の名場面らしいが、読んでない。なんでお宮を蹴飛ばしているのだろうか?
 
見る人によっては慰安婦像よりやばいよな。これは 真面目なのかギャグなのか?




こんな感じで熱海を駆け足でまわっているうちに日もくれたので、居酒屋で刺し身をつまみにビールを飲んで帰ることにした。

温泉街の夜は早い。

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行くまでは寂れた温泉街を勝手に想像していたが、実際行くと若いカップルやグループで賑わっているので驚いた。

熱海は、本物の自然の美しさ備えた錦ケ浦をあえて切り離し、虚構とギャグの街を作り上げ、若者を引き付けることに成功したようだ。

熱海においては、本物のであることには何も価値がおかれていない。

「楽しけりゃいいんでしょ?」と熱海の神様はおっしゃった。