エッセイ1 牡蠣弁当(再掲載) | なまでこの鉄道写真館

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 1992(H4)年5月大型連休の頃、北海道のワイド周遊券で旅をしていた時の出来事です。

根室ユースに宿泊して、次の目的地に移動中の事です。

その当時私は31歳でした、私よりは年下と思われる女性が同じ車両に乗り、釧路・帯広方面を目指していました。その時の様子をエッセイ風にしてみました。

 

 

   第一章     牡蠣弁当

「ちょっと行って来るからね」女性はそう言いながら列車からホームへ飛び降り、跨線橋を駆け上り駅の改札の方へ消えていった。どうやら駅の売店へ行った様だ。
 私たちが乗ってきた根室本線の普通列車は、此処厚岸駅で後ろに一両気動車を増結して二両で出発する、そのため十分間の停車となっていた。


 北海道厚岸町は牡蠣の水揚げが多いことでも全国に知られていて、牡蠣弁当がある有名な駅でもあった。女性はこの短い停車時間に牡蠣弁当を手に入れようと売店へ向かったのである。売店について一分ぐらい経ったところで女性の姿が見えなくなってしまった、不安な私は列車から降りてその売店へと向かった。跨線橋を小走りに駈け上っても出口までゆうに二分くらいはかかってしまう。売店の前には女性の姿はなく駅前に至っては全く人影がなかった。不安な気持ちを残したまま発車二分前となったので私は列車へ戻ることにした。列車に乗って間もなく発車ベルが鳴り始めた。ドアの外を覗くと女性が大事そうに弁当を持って小走りにやってきた。列車へ乗り込んだと同時に発車ベルが鳴りやみドアが閉まった。


「何処まで弁当を買いに行ってきたの。」
「駅の売店が売り切れたので製造元の店まで買いに行ってきたの、列車の時間待ちに買いに来たって言ったら順番待ちしていたお客さん達が快く譲ってくれたの。」女性は肩で息をしながらも嬉しそうに話していた。


 動き始めた列車の中で女性は早速弁当の包みを開け、付いていた割り箸で中身を少しずつ半分に分け始めた。弁当の蓋にその半分を移し始めた、何が始まるのか不思議な気持ちで暫く私は女性の行動を見入ってしまった。中身が移し終わったところで今度は割り箸を半分に折り始めた、結局割り箸は四本となった。


「どうぞこれ買ってきたから食べて」
女性はその蓋に分けた半分のを私に差し出したのだ。私は暫く訳が分からずぼんやりとしていたがしっかりと牡蠣弁当は受け取っていた。
やっと我に返り、「ありがとう」と言って暫くこみ上げてくる何かを感じていた。
 何故私にも分けてくれるのかと云う問いにも、女性は

「一人で食べても美味しくないから」と言うだけであった。


あんなに苦労して手に入れた牡蠣弁当をあっさり私に半分も渡してしまうなんて、その女性とは昨夜泊まったユース・ホステルで知り合ったばかりなのに。


 しかし食欲には勝てずしっかりと食べ始めたのであった。これが又格別においしかった。
 

 

この写真は本文とは関係ありません。

念のため、函館本線長万部駅での写真です。

キハ40系車両です。

 

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