ミュージカル、ビリーエリオット。
ミュージカルをはじめ、舞台作品はそんなに頻繁ではないものの、年に何作品かは見ます。でもこの先の一生、おそらく死ぬ瞬間まで心に残り続けるであろうと思える作品には、そう簡単に出会えるわけではありません。
今回、赤坂アクトシアターでの良席にも恵まれたこの「ビリーエリオット」というミュージカルから受けた衝撃と感動は、私は一生忘れないと思う。真面目にそう思います。
ビリーは前田晴翔くん。ポスタービジュアルにもなっているように、とても綺麗な子ですね。繊細で神経質な風情。「angry dance」で、行き場のない憤りをダンスで表す場面では息をのみ、言葉を失いました。
マイケルは城野立樹くん。ビリーの前田くんとは同じくらいの身長。この役は、自然な可笑しみのある子が選ばれる役なのでしょうが、彼の場合は飄々とした雰囲気とクラスに一人は存在する面白い子、といったような愛嬌があります。将来映像の世界で味のある脇役として活躍してほしいような…。橋爪功さんや火野正平さんに通じるような空気をもっているようです。
この時点で他を見ていないから他のキャストと比較はできないけど、この二人は同級生の『ナイスコンビ!』感がとってもよく出ていて、非常に微笑ましかったです。そして見終わった後で前田くん本人のツイッターで知ったのですが、この二人『親友』を自認する大の仲良しなんだそうで。その二人が本番の舞台で初共演するという、本人たちにも記念の回だったとのこと。だからかなぁ、最後にロンドンに旅立つビリーを一人見送る場面は思い入れたっぷりでジーンとしました。良いものが見れました。
お父さんは益岡徹さん。私が見た映画版と、映像作品としても残っているエリオット・ハンナくん出演のロンドン公演での恐ろしく怖いお父さん達と比較すると、一番優しそうなお父さんです。ミュージカルは初挑戦だったんですね。カーテンコールでのチュチュ姿が最高です。
ウィルキンソン先生は島田歌穂さん。トニーは藤岡正明くん。私がこの日の公演を選んだのはこの二人が出演する回だからです。歌穂さんのウィルキンソン先生は、もう100%バッチリ。バレエダンサーとして一流になれず、田舎の才能の無い子供達を公民館のような場所でタバコをふかしながら教えるそのやさぐれた姿。自分の夢を託すビリーと本気で口論もして、また通じ合っていく様。もうね、思い描いた通りのウィルキンソン先生がそこに生きてましたよ。
トニーの藤岡くんはね、こりゃまた労働者役で。おそらく海外の労働者層の役に日本一はまるミュージカル俳優だと思うわ。そして彼は何といっても私が見た前述の映画版舞台映像版でのトニー役の俳優さん達のビジュアルの流れを汲んでいるんですな。藤岡くん、トニーになるべくしてなったと思います。
一番心に残ったのは、見る前には予想もしていなかった意外な部分でした。
ロイヤルバレエスクールのオーディションに行けなくなり、傷心のビリーが夢の中でダンサーとして成長した自分と踊る、おなじみ「dream ballet」のシーン。この場面のオールダービリーが終始微笑みながら、時にビリーを優しく見つめながら踊っているんです~~ 私、それを見た瞬間涙が溢れましたねぇ…。べつに無表情で踊ったって、切なく美しい場面なんですがね。あの微笑みは、今は傷心のビリーに対して、諦めないでバレエに向き合っていればどんな形であれ幸せでいられるよ、と語りかけているようで。なんだか堪らなかったです。
書き始めたらキリがないです。
夢を追う子供達の成長が、物語と現実が見事にリンクする奇跡のミュージカルです。
もう1回、違うキャストで行くことにしちゃいました。
そしてそして今、かつて1回テレビで見ただけの映画版「リトルダンサー」を、Blu-rayを購入して再び見ているところ。
映画と舞台で双方で描き切れなかった部分を補完するように楽しんでします。特典映像が素晴らしくて、場面解説の他、ミュージカル化に向けてのドキュメンタリーや、ロンドン初演キャストの家族を含めたドキュメンタリーなど、今回の舞台ファンとしても非常に楽しめます。
というわけで、今の私はビリーエリオット月間が続いています。