初めてではない、お江戸日本橋亭。
縁あって昔お稽古仲間のH君の出ていた彼のお師匠さんの一門会を見させてもらったことがありました。こんなに小さな会場だったっけ?
自分の記憶をとどめておくために、今回もブログを書き書き。
劇場というより、舞台のあるマンションの会議室、とか、地域のコミュニティーセンターの一室って感じ。

前の2列分は、床を畳敷きにしてありまして、座椅子に座布団を敷いて並べてありました。最初は3列目以後の椅子席に座っていたけれど、思い立って畳の方へ。
これがね、正解だったんですよ。
マイクもいらない距離感で、足を伸ばしてのんびり見られる落語って良いわぁぁ。くつろぎ感、はんぱないっす。
お囃子の生音もお腹に響く心地よさで、スタートしました。
 
今回はこのお二人の会は始めて5年で、10回目だそう。
10回目にして初めて開演前から満席が分かっているという心穏やかに迎えられる公演なんだそうです。
継続は力なり、ですね。先日見に行った吉弥さんと米紫さんの会は老若男女バランスよく入り混じっていましたが、今回は若い女性が多い客層でした。…分かる気がするなぁ。
 
OPトーク
佐ん吉さんが面白い事を言おうとしても、イマイチ反応の薄いお客さん。うん。よく分からなかったです。フォローする鉄瓶さんのしっかりもの感と合わさって、お二人は良いコンビなのですね。
ま、でも、佐ん吉さんってなんだかふにゃんとした雰囲気の方のようで、素のおしゃべりで無理に笑わせなくてもいいんじゃないの~、とも思った次第。和み系の非常に可愛らしい方ですね。女性ファンが多いのも納得です。
一発目の佐ん吉さんは準備にかかります、と一人高座を降りて下手へ引っ込みますが、すぐに見台と膝隠しをよいしょと自ら運び、高座にセット。上方落語の必需品ですね。
 
佐ん吉 『鷺とり』
上方落語は話の本筋と関係なくても、笑わせられるところをとことん膨らませていくんですよとまくらで説明してお話へ。タイトルだけ知っていましたが、ちゃんと聞くのは初の、この鷺とり。説明通り、忘れた頃に時事ネタを使った言葉遊びを入れ込んでいらっしゃいましたが…。まーーー、分かりにくいこと分かりにくいこと(苦笑)。しかも1個じゃなくて2個3個。他の方がどうされているのかは知りませんが、分かりにくいのがまた面白かったです。
帯に手拭い挟むみたいに捕まえた沢山の鷺の足を帯にぐるりと差し込んで、目覚めた鷺が一斉に羽ばたいたら体ごと空に持ってかれちゃう。ようやく掴まって落ち着いた場所が天王寺の五重塔の先端だったって。
いつも思うけど上方落語って、現実的な光景にファンタジーが自然に混入してくるのが私は好きです。
 
鉄瓶『鹿政談』
つい最近米朝師匠の動画で見たばかりだったこのお話。鉄瓶さん、奈良ご出身だそうで、奈良を題材にしたお噺は2つしかない、そのうちの一つ。
昔の奈良では神の使いとされる鹿を殺すと大罪だったそうで、死んだ鹿と一緒に縄で括られて生き埋めにされてしまうのだとか。その、鹿殺しで処罰されそうになった、正直者のお豆腐屋さんと名裁きを見せたお奉行さんのお噺。
興味深かったのは、おからについて。
おからは「切らず」ともいうのだそうで、読んで字のごとく、切らなくてもよいものだから「切らず」。で、噺家さんは「おから」ではなく、「切らず」を使うのだそうで。それは“お客さんとの縁が切れないように”また、おからの“から”が、客席が空っぽの“空”に通じるから、という験担ぎなのだそう。へーーぇ。たしか噺家さんの験担ぎって、他にもいっぱいあったよね。
このお話、私は好きです。鉄瓶さんの話ぶりは、落ち着いて聞けますなぁ。
あと、関東でもおからはおからだと思うけどなぁ。スーパーで売ってる惣菜は卯の花って書いてあるけど。
 
中入り
休憩時間です。
ここで、お隣に座っていた歳もそう離れてはいないと思われる女性が話しかけてくれました。
大阪から遠征されてきた佐ん吉さんのファンの方。
くつろぎ感満載の座椅子席でしたので、初対面でも自然に和やかに話せちゃうんですな、これが。佐ん吉さん追いかけ時折こちらにもやってくるそうなんで、またご一緒できたら嬉しいなと思える貴重な出会いでございました。座椅子万歳。
 
鉄瓶『堪忍袋』
先日の横浜にぎわい座において、米紫さんで聞いたお噺。ということで、聴き比べ的な感覚で聞いてました。
どうやら堪忍袋が満杯になった時のサイズに違いがある様子。
鉄瓶さんの方は普通の巾着袋が一杯になった感じ。
米紫さんの方は、話を聞きつけた近隣住民が次から次へとやってきては愚痴を吹き込み、膨れ上がった堪忍袋は床にズルズル引きずりながらじゃないと運べないくらいに重くなっていました。
これもまた、楽しく聞けました。
 
佐ん吉『肝つぶし』
黒紋付の羽織で登場。恋煩いで臥せっている幼馴染を助けたい男の話。話のあらすじを知らずに聞いたものだから、これが最初は黒紋付を着込む程の大ネタなのか?と不思議に思っておりましたが、話が進むにつれて納得。
包丁で眠っている妹を殺そうとする場面。包丁を咥え構えた姿に凄みと色気。こういう型に踊りの素養って生きてくるんですよね。この色気は仮名手本忠臣蔵五段目の斧定九郎に通じるものがありました。このための黒紋付だったんですね。
 
というわけで、お二人の落語会。存分に楽しめました。
今日会場でもらったチラシで知ったのですが、6月に「佐ん吉大一番」という会を開くそうで。「くしゃみ講釈」に「蛸芝居」。きゃー。それだけでも見たい見たい~~。その他盛りだくさんのご様子で。ちょうど仕事も休みの水曜日とのことで、ご本人手売りのチケットを購入することに。
 
外でお見送りの佐ん吉さんに話しかけ、チケット買いました。1枚2500円のチケットをご本人が束で握り締めその場で売ってました。お釣りあったらどうするんだろ。
歌舞伎を通じてお師匠さんの吉朝さんの芝居話を知り、それでお弟子さんの貴方の話を聞いてみたくて来ました、と伝えたところ、「それでしたら今度一門会があるので、ぜひどうぞ」とのこと。ぜひぜひ。行かせていただきますよ。
 

 
嬉しい出会いもありました。(よーこさん、また会いましょう!)
次は4月2日の国立演芸場にて、吉弥さんの独演会。
初の国立演芸場です。
なんとゆーか…
国立劇場なら歌舞伎や踊りで客席でも楽屋でも何回も行っているのですが、まさか自分が裏側の(といったら噺好きの方が怒りそうだが)演芸場に入ることになろうとは。去年の10月から12月の忠臣蔵通しに通っていた時分には、夢にも思わなかった展開になっております。