
朝鮮戦争からの韓国激動の混乱時代を家族のために苦難の人生を生き抜いてきた、
ごく平凡な父とその家族の姿を描いた叙情作品。
監督は『海雲台(邦題:TSUNAMI)』の ユン・ジェグン。
主演:ファン・ジョンミン、キム・ユンジン …など
物語序盤は、主人公:ユン・ドクス(ファン・ジョンミン)の現代の老年期。
そして幼少期の朝鮮戦争末期にさかのぼり、
侵攻する中国軍から家族で逃げる際の船にて、ドクスが父と妹・マクスンと
生き別れることになった壮絶な場面から始まります。(興南撤収作戦)

導入部からどんどん物語に引き込まれていき、
さらには現代と過去とで時間が交差していくような演出がとても自然で見事です◎
ラストまで特にスピーディーな展開でもなく、淡々としているわけでもないのに、
幾つかの大きな山場も感動的に盛り込まれ、涙と笑いでさらっと観られてしまいます。
主人公ドクスの幼少期は、この物語の最大の意味をもつシーンでもありました。
生き別れた妹への罪悪感。
自分のせいで妹とはぐれてしまったために、せっかく助かった父が妹を探すために、
船から降りて家族と別れることになったこと。
そして、その時父と交わした約束。父の願い。
それらが、ドクスの一生を家族のためにすべて犠牲にしてまでも捧げることになった
大きなきっかけとなり、現代老年期になってからようやく、
その罪悪感と父との約束や願いから解放された瞬間のセリフで物語はラストを迎えます。
ああ、この作品は父と息子の(絆の)物語だなあ、と思いました。
父の息子としてのドクス。
やがては自らが父となり、家族を養うドクス。
それぞれの父性。その思い。
同時に数年前に他界したわたしの父を思い出しました。。
ただ、ドクスとドクス父との絆を語るエピソードが序盤の別れのシーンのみだったため、
この物語が最も伝えたいとするテーマが薄れてしまったように感じてしまいました。
父との約束があったから何があっても守り抜きたかったもの。
父の願いがあったから、幼くして一家の家長となって自分自身の人生、
夢まですべて家族のために我慢してどんな時も大丈夫だと笑いながら、
どんな苦難も耐えて生き抜いてきたドクスの胸に秘めた思い。
コップンの店への頑なな思い入れ。
それらが激動の韓国近代史のイチ出来事として感動場面として流れていくだけで、
最後にドクスが父の写真を前に発した一言でようやく本題を思い出されたかのようで、
ドクスが1人背負った「責任」という重い呪縛からようやく解き放たれる
重要な1シーンだっただけに、非常にもったいないように思いました。

↑このポスターが一番、この作品の印象を語っていると思います◎
また韓国近代史を語るヒューマンドラマとしては、
韓国を代表する著名人たちがところどころのシーンで登場したりするので、
韓国の人々にとって懐古的な共感を得る部分もHITに繋がったのだろうなと思いました。
実際にベトナム戦争に出兵されたナム・ジンという歌手役で、
東方神起のユノがこれまたカッコいいというかおいしい役で登場するので、
FANサービスも抜群ですね(笑)
ただ、ベトナム戦争のシーンは韓国としてやや都合よすぎる内容だったと思います。
ベトナム戦争の真相との大きなギャップを感じずにはいられませんでした。
冒頭のドクスが幼少期に米国の船に助けられた恩義として、
今度は別の戦地において自らが人助けを行ったという見方もあるかもしれませんが、
個人的に鑑賞のタイミングがよくなかったのか… あまり心象がよくなかったです(^^;
韓国近代史といえど、日本のことはまったくかすりもしてないし(苦笑)
まぁそれをいれたら、2時間程度の映像には盛り込めない、
まったくテーマの反れたきわどい内容になってしまうのでしょうがw
それにしても、ファン・ジョンミンほど平凡かつ平凡すぎる人の役をやらせたら、
他に太刀打ちできる役者はいないだろうってくらいの名役者さんですよね。
ほんとに上手すぎるしハマリ役◎
2つの戦争が絡んだ一見重くなりがちなストーリーでも、悲壮感が最小限にとどめられ、
朗らかな明るさや素朴さとか温かさなんかも感じられるのは、この配役だったからこそ。
幼なじみ役のオ・ダルスの笑わずにはいられない和むようなキャラも最高でした♪
ヨンジャ役のキム・ユンジンは貫禄が出てきたせいか…
あまり清純さというか、初々しさに欠ける部分はあったものの(苦笑)、
ファン・ジョンミンと並んで演技派の女優さんなので、安心して観られました◎
最後に作中、とても印象的だったシーンは、ドクスがヨンジャに伝えたセリフです。
「わたしはこう思う。
辛い時代に生まれて、辛い歳月をたえてきたのが子供たちではなく、
私たちだったことがほんとうに幸いだ。」
おおよそ先人たちの、”思い”を代表するようなセリフのようにも感じてしまいました。。。
戦争からは決して何も生まれない。
人と人が殺し合い、大事な人と生き別れてしまったり、
必ず誰かが傷や痛みを受け負い、犠牲になる。
それが子供たちではなく自分たちでよかった、という過去の激動を生きた先人たちの思いが、
今の未来を築き上げてきたんだという、心からの感謝さえわいてくるようなセリフでした。
静かに平和を願う、そんな作品のようにも思えました。
とてもオススメです◎