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2017   3/9
  <  反射熱  >

 

ぎゃあぁぁーーーーー

 

私は頭を抱えて大きな声で叫んだ。 彼が壊れていく。


ある本の主人公が、突然、私の家の呼び鈴を押してから9年という歳月が過ぎた。


彼はまるで瞬間移動してきたように唐突に私の前に現れた。


そう  これは夢なのだ。夢に違いない。そうでなかったら…


 白日、暇になるとパソコンの前に座りカチャカチャと検索したり、チャットルームで遊び、顔のない友達が増えていった。

 

その中の数人と親しくなり、毎夜、毎夜、夜更かしをしては、次の日寝ぼけまなこをこすりながら会社に行った。

 

私は結婚をきっかけにパソコンから遠ざかっていたが、二年ぐらい前から一人きりの昼間の時間を持て余し、また、パソコンを起動させるようになった。



暇つぶしにブログを始め、友達登録の申請のお知らせが来るとO.Kにした。

 

名前があるが顔のない友達が一人増えた。


名前は異性であっても、実際のところそれさえも分からない。会話の数が増えてゆき、その人のことが昔からの知り合いだったように思える…

 

家事を済ませるとパソコンに向かった。

 

 "別に悪い事している訳じゃないわ。だって、新しいお友達の作り方なだけよ。"

 


誰に言うまでもなく独り言が増えた。


夕飯の支度をする時間がくると急に切なくなる。

  

私はどうしてここに居るのだろう?

 

主人の顔が他人に思える。

 

 顔のない人物がどんどん大きくなってゆき、自分の心が支配できなくなりそうなのでパソコンを開かなくなった。

 

いまや携帯ひとつ有れば何不自由なく生活ができる。


そんな時だった。私は誰かにつけられている気がした、絶えず黒い影が付きまとう。


  "やだ、なんだか怖い!"


久しぶりに服でも買いに行こうと銀座に出掛けた。

 

若い頃は良く、友達とランチに来たけれども、もう、私が着られる服が見つからない。

 

 

“あーあ、家の近くの駅ビルに行けば良かった"と思った瞬間、


「待っていたよ」

 という声がして振り向いた。

 

 「あの、どなたですか?


すると顔のない男が立っており、無数の顔の無い人達が代わる代わる「僕だよ、私よ」と声をかけてくる。

 

遂に幻覚が現れるようになったのか?


それから毎日のように誰かにストーキングをされている様な気分になり、外出から戻ると気分が悪くなってベッドに横になる日々が続いた。



ある日の昼に家の前を掃除していると、男の人が直接私に「郵便物です」と白い封書を渡してきた。

 

 "郵便配達の人かしら?"

 

私宛の手紙だった。

 家に戻って開封するとそこには想像を絶する内容の長文が書かれていた。

 

"そんな"・・・

 

一枚の写真が同封されており、この人が・・・、

 私は始めて黒い影の正体を知った。

 

 "狂っている、この人、狂っているわ。どうしたらいいの? "


この人はチャットルームの中の一人で、その背後には数人の仲間がおり、長年に渡って私をストーキングしていたと言うのだ。


「なぜ、きみ、突然消えたの?

 

「そんな、それがこの世界のルールでしょ違うの?

 

それからは、彼は私の目の前に現れては消えることの繰り返しで、まさか、盗聴されているとか?

 

私はその人に直接に会って言いたい。


「ねぇ、あなたは狂っているわ!


私はこの台詞を天井にむかって何度も何度も叫んだ。

 

「このままで行ったら確実にこの人、壊れるわよ! 救済は私じゃなくって、この人なの・・・」

 

私はこの人を強く抱きしめて言いたいのだ。

 

「救済」という言葉が独り歩きし私の上に覆い被さる…


私はこの言葉を誰かの背中に貼り付けた。

 

その誰かは、

あなたなのかも?

わたしなのかもしれない…。

        それとも夢の続きなのか?
        本の主人公はわたしだったのかも
        しれない  …。

        わたしは既婚者なのだろうか?
        わたしは女なのだろうか?

        あなたは本当にあなただったの
        だろうか?