「ピロリ菌」ってご存じですか? | なくい外科内科胃腸内科クリニックのブログ

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2017年5月8日、宮城県岩沼市あさひ野にオープンした「なくい外科内科胃腸内科クリニック」です。
かかりつけの皆様やクリニックに興味をお持ちの皆様に、
少しでもお役にたてる情報を提供できればと考えております。

ピロリ菌ってご存じですか?

 

内視鏡検査を日常的に行っているクリニックでは、

ピロリ菌の検査・治療も日常的に行っていますので、

今回はピロリ菌について簡単にお話します。

 

ピロリ菌とは

ピロリ菌は、正式にはヘリコバクター・ピロリという細菌で、比較的最近ですが1983年に胃の中から発見されました。胃の中では胃酸が食べ物を消化すると同時に、人体に有害な細菌を殺菌し、腸管に入り込むのを防止する働きがあるとされていました。しかし、ピロリ菌は自らアンモニアを作りだして周辺の胃酸を中和し、胃粘膜の表面に住み着いていることがわかっています。

 

ピロリ菌の感染経路

ピロリ菌は口から入り込み、胃に住み着くと考えられています。しかし、ピロリ菌を発見したマーシャルという研究者は、自ら発見したピロリ菌培養法でピロリ菌を増やし、病原性を確かめるため飲み込んだそうですが、急性胃炎は発症してしまいましたが、その後自然に消失してしまったそうです。つまり、成人の正常な免疫力があれば、新しく感染することはほとんどないと考えられます。免疫力が弱った方でなければ、井戸水を飲んだり、家族の中ではしやスプーン、コップを介してピロリ菌に感染することはありません。ただ、免疫力の未熟な小さなお子さんについては、離乳食の口移しや井戸水は避けた方がよいと考えられます。

 

ではどうやって胃に生着するか

どのような経路かははっきりわかっていないのですが、5才未満の免疫力が少ない時期に口から入って生着すると、成人になっても排除されずに胃の表面で持続的な炎症を起こし、これが各種の病気の一因なると考えられています。発展途上国で感染率が高いこと、日本では高齢者ほど感染率が高く、若年者ほど感染率が低いことから、免疫力の低い幼少期の衛生環境が大きく関わっていると考えられます。

 

ピロリ菌と関係のある病気

ピロリ菌はこれまでの研究で、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・慢性胃炎・胃癌、そのほかにも非常にまれな病気ですが、胃にできる特殊なリンパ腫(MALTリンパ腫)や特発性血小板減少性紫斑病という病気の発症に関係していることがわかっています。

 

ピロリ菌と胃癌の関係

ピロリ菌は胃の表面で免疫細胞を刺激する物質を分泌し、炎症を引き起こします。これが長期間持続すると、胃の粘膜は徐々に萎縮して慢性胃炎と呼ばれる状態に変化してしまいます。最終的には、胃粘膜の萎縮は胃全体に広がって、ピロリ菌が生着できない状態にまで変化してしまいます。これまでの研究結果から、萎縮が進んだ方ほど胃癌の発生リスクが高いといえます。つまり、胃がん検診の役割は、胃がんの有無を調べると同時に、将来胃がんになる危険性を知るため、慢性胃炎の有無を調べる検診を同時に行っているのです。実際に、バリウム使った集団胃癌検診で胃炎が疑われた場合は、内視鏡検査とピロリ菌検査をうけるようにすすめています。

 

ピロリ菌検査はどのように受けたらよいのでしょうか

ピロリ菌は胃癌の発生母地ともいえる慢性胃炎を作り出すといえますが、そもそも現時点で胃癌がないか確認しておかなければ、ピロリ菌だけを検査し除菌しても、むしろ胃癌の発見が遅らせてしまう危険性があります。そこで保険診療では、内視鏡検査を行って胃癌がなく、慢性胃炎が見つかった方にのみピロリ菌検査が認められています。もちろん人間ドックや企業検診などで健康保険を使わずピロリ菌検査を行っている場合もあります。

 

ピロリ菌検査は実際どのように行われているのでしょう

ピロリ菌を調べる方法には、尿素呼気試験・血液検査・便検査そして内視鏡検査時に胃粘膜を採取して直接調べる方法があります。どの検査も9割以上の感度がある正確な検査ですが、検査時間や身体的負担に違いがあり、さらに検査する方の体調や基礎疾患、内服している薬などにより誤差が生じる可能性がありますので、実際にどの検査を行うかは検査を担当される医師とよくご相談いただく必要があります。

 

・胃がん検診で慢性胃炎を指摘されたが、ピロリ菌検査を受けたことがない方

・人間ドックでピロリ菌が陽性と判定された方

・家族にピロリ菌陽性の方がいらっしゃるため自分も心配、など

ピロリ菌に関するご心配がある方は、お気軽にご相談ください。

 

最後に

ピロリ菌感染が判明した慢性胃炎の患者様は、除菌治療により将来の胃癌の発症リスクを約1/3に軽減できるという研究結果もございますので、胃癌検診・ピロリ菌検査を積極的にお受けくださいますようおすすめいたします。

 

 

おまけ

1995年にロックバンド「爆風スランプ」が「ピロリ」というアルバムをリリースしており、その中に「ヘリコバクター・ピロリ」という曲が収録されています。私の記憶では、ボーカルのサンプラザ中野さんが作詞なのですが、ピロリ菌陽性の十二指腸潰瘍を発症したときの体験や、そのときにピロリ菌について勉強したことが元になったそうです。私は1996年に医師国家試験を受けたこともあり、とても印象深い曲です。(もちろんアルバムは今でももっています!)常々残念に思っていることは、「ヘリコバクター・ピロリ」がカラオケに入っていないことです。ピロリ菌を知る医療従事者ならきっと楽しく歌える曲なので、できればカラオケに入っていてほしいです!