第一回ツイートアカデミービジネスセミナー レポートその2 ~第一講座 津田大介さん~ | Naka_YamaN Screams Louder (ナカヤマン。のブログ)

第一回ツイートアカデミービジネスセミナー レポートその2 ~第一講座 津田大介さん~

前回のブログに引き続き、
2010/06/08(火)に行われた「第一回ツイートアカデミービジネスセミナー」のレポート、その2です。


今回は第一講座 津田大介さんによる「メディア総論~Twitter登場以降のメディアについて~」。
有料講演につき全てを書くわけにもいかないので、来場者のtsudaりをもとにボクの所見を記すカタチにします。


ちなみに、来場者のtsudaりはハッシュタグ「#twiaca」
もしくはトゥギャッターのこのリンク先 で見れますよ。


まず大前提。
今回、依頼時にボクから津田さんにご説明&お願いしたのは以下の内容。


・ツイアカビジネスセミナーは前半の3講演がワンパッケージの構成である
・その3講演はメディア論、広告論、ブランディング論と収束していく
・そのアタマである第一講座では、ブランディングまで話が至るための基礎知識をお話して欲しい


その結果、さすが津田さんです。
いい種をまいて頂きました。本当にありがとうございました。


以下に、ボクが「種」になると思った部分を記していきます。
先に書いておきますが、九割方ボクの所見です。全国一億人の津田さんファンの方ごめんなさい。


1)市場背景(日本人とTwitter?)

・現在のTwitterアカウント数は全世界で一億人
・全世界の月間ユニークユーザーは一億八千万人
・全世界の一日のユーザー増加数は30万人

・日本のユーザーアカウント数は700~800万人
・ただし、見るだけならアカウントは必要ないので実際の利用者はそれ以上(1000万人?)

Twitter訪問者数がmixiのそれを超えたというニュースも記憶に新しいと思います。急速に伸びているサービスなのは間違いありません。そして全世界のアカウント数の7~8%程度にすぎない日本人ユーザーが、ツイート数においては実に全体の26.62%を占めてなんと世界1位!概算で日本人は世界の平均の約四倍数のツイートをしていることになります。おそろしや。

ちなみにツイート数の2位が母国アメリカで全体の21.19%。津田さんは先月末行かれたアメリカの「Gov 2.0 Expo」の印象として、アメリカのTwitter市場はこれからが伸びる時期なのかも?と仰られていました。意外ですよね。あと楽屋で堀江さんボクと話されていた時も「(ビジネス利用などに関して)案外、日本人と似た課題で悩んでるんですよね。」とも言われていましたよ。

ここからTwitterと日本人の特性のマッチングについて展開しても面白そうですが、ブランディングの話から逸れそうなので我慢我慢。ということで、以下の事実を基本知識として、以下の二点からブランディング論を展開するととても楽しい感じになります。


2)5つのキーワード、特に「リンク」

津田さんが挙げられていたのが、オープン化&デジタル化時代の5つのキーワード。「リアルタイム、共感・強調、リンク、オープンソース、プロセス」。この中で興味深かったのが「リンク」。

津田さん曰く、「リアルの世界では対立しあう競合同士が、補完し合う関係を持つ(持った方が良い?)のがTwitterの世界」。これはイメージし易いですよね。Twitter上でゴリゴリ削り合えばお互い評価を落とすのは明白。それよりもシナジーを狙っていく方が戦略的にベターです。そもそもTwitter上では、様々な意味で二者択一ではないのだから。

この話は、マーケティング的に大きな意味を持ちます。後ほど触れます。


3)誤配による出会い

これは素晴らしく巧い表現だなあと思ったのですが、要は「偶然、手元にきた情報」が元になって興味、購買意欲が起こる状態です。実際Twitterでは頻繁に起こりますが、マーケティング的に見ればその一部は偶然では無く、近似セグメントからの情報には琴線に触れるものが多い、とも解釈可能です。

セグメントとは性質別に分類した集団の事ですが、人間のキャラクターとは、例えば音楽の好みで分類してもイメージできるものです。クラシック好き、ボサノヴァ好き、メロコア好き。各々キャラが想像できます。そして、そこから別の趣味に想像を展開することも可能です。

「クラシック好き→大人しそう→洋服はコンサバ好き?」という感じ。つまり、音楽の同一セグメントでテレビの趣味を語り合ったとしても、趣味が合う人が現れる可能性は非常に高い。「趣味が合う」というやつですね。

Twitterにおいてはタイムラインに利用者の性質が現れがちです。無造作にフォローしたタイムラインを不規則なタイミングでチェックする人には当てはまりませんが、「面白そうだと思う人をフォローする」、「頻繁にチェックしたい人をリスト化する」などの行為を行った場合は完全に当てはまります。

その場合、タイムラインを媒介にして同一セグメントが結びつきやすいとも言えます。


+α)意図的に「誤配による出会い」を創る

2)と3)の話を組み合わせた時、ひとつのアイディアが浮かびます。それは、意図的に「誤配による出会い」を創り出すこと。ネット広告では昔から書かれてきた絵ですが、実現しているのは見たことがありませんw。ある意味では本物の「広告」かも。

a)新規見込み客を明確に把握する、b)誤配して出会って頂くという二段階、これにより少ない人数にしか広告しないコストメリットと、見込み客=購買確率高のメリット。結果、購買者ひとりあたりの広告宣伝費が極端に下がります。

a)新規見込み客=セグメントを明確に把握することは相当難しい課題でしたが、Twitterの登場により可能性はグンと上がったのではないでしょうか。その為に有益な施策のひとつが実は2)で語った「リンク」=競合同士のシナジーとも言えます。

例えば、飲料ブランドAだけがTwitterで活動している状態よりも、飲料ブランドAとBがTwitterで活動している状態の方がセグメンテーション(性質分類)が成され易い状態です。しかもAとBがポジティブに比較できる状態であればあるほど、ユーザーのチョイスに明確な理由がある=きちんとセグメンテーションされている状態に近づきます。

ボクが思うに、これは他業界のセグメンテーションを鏡に使う方がうまくいきそうな気がします。

例えばギャルマーケットに向けて新発売する飲料でTwitterプロモーションする場合、とりあえずギャルブランドのフォロワー総ざらいしてアプローチしたいですよね。もしギャルブランド群が先ほどの「きちんとセグメンテーションされている」状態であれば、どのブランドがその飲料に一番近いユーザーを持っているか?まで掘り下げることが可能かもしれない。

広めのターゲットに対してトライアルをやるのがTwitterプロモーション、その結果から近似ターゲットのブランドを選定して商品コラボするなんて出来れば、素晴らしいですよね。めちゃめちゃロスが低い。


ここからは余談になりますが、ファッション業界のブランディングエージェンシーである当社が、ある意味では縁遠いTwitter事業をやっている理由のひとつはこれです。

ファッションブランドというのは星の数ほどあります。その数だけセグメントが存在する。そんな業界が他にあるでしょうか?ボクはファッション業界が他業界のセグメンテーションの指標に成り得ないか?と考えています。

マーケティングでいう「メイン」ターゲットというのは、理解はできても、実行しづらい課題です。結局、絞り切れずターゲット設定の枠を広げてしまうのが人情。しかし細分化されたファッションブランドのセグメントを用いれば、メインターゲットはブランドA、サブターゲットはブランドB、C、Dまで、という風に明確化できます。

その上、各々のブランドの顧客へアプローチすれば良いので実行も容易。その際にはコラボレーションも有効な施策ですし、コラボ相手はファッションブランド。自社ブランドがオシャレに認識されるというオマケ付きです。


最後に。今回コラボレーションの話しが多くなったので余談の余談を。戦略的にコラボを捉えた場合、二つの意味に定義することが可能です。

Ⅰ)異業種コラボ・同一セグメントターゲット

これは最後に記した、ファッションブランドAが家電ブランドBのターゲットと一致している場合などを示します。Aのセグメントが明確に把握できていいれば、Bにとってこんなに有難いことはありません。そのセグメントに対して存在をアピールする、その為のコラボがこれにあたります。

Ⅱ)同業種コラボ・非同一セグメントターゲット

ファッションブランド同士のコラボなどはこれです。しかも戦略的な意味で解釈すれば、セグメントが完全一致していた場合にはコラボの意味は小さくなります。長くなるので割愛しますが、カニバリゼーション(食い合い)を起こすからです。

そこで、各々のブランドのセグメントが完全一致しないことが重要になります。一方で完全に一致しない状態も、そのコラボ自体が全く興味を持たれない、という点で無意味です。

これは数学の授業で出てくる∪とか∩を使うとすごく分かりやすくなります。

AとBとのコラボに一番関心を持つのは、両方のブランドを好きなのセグメント=A∩B。この集団が他のユーザーに魅力を伝えて行くと言っても構いません。これこそが本来、コラボの効能です。相手方のセグメントに営業を掛け合う「交換営業」ですね。

ブランドAの新規営業は[(A∪B)-A]、ブランドBの新規営業は[(A∪B)-B]に対して掛けられます。そして、両社合算のコラボの意義というのは[(A∪B)-A]+[(A∪B)-B]=[(A∪B)-(A∩B)]。つまりA∩Bが大きすぎない事もコラボで重要なことのひとつなんです。

これまでは実務に置いてこれらを明示することは不可能に近かったのですが、Twitterまたはその次の世代のツールではこれらもシミュレートしながら仕事することが可能になるかもしれません。そして、そこまで来た時にはクリエイションが非常に重要な要素になってきます。ファッション業界のメンバーは大活躍するでしょうね。楽しみ。

ずいぶん話がズレて自分でも驚きますがw、ボクはTwitterに出会ったときに、これらの話が脳みその中を駆け巡ったのを記憶しています。ツイアカの知名度が上がって「どうしてファッション以外のことをやっているの?」と聞かれる機会が増えたのですが、将来的に大きなメリットをファッション業界に持ち帰れるイメージがあるからです。そして何よりおもしろい。やはり研究室にいた人間なのでこういうことが好きなんだろうなあ。


今回はダラダラと話を展開して、すみませんでした。
次回からはコンパクトにまとめます。


しかも、ボクの所見が殆どなのにw。。
申し訳ないので、津田さんが講座でお勧めされていた書籍を以下に記しますw。


「ツイッターノミクス」、「クラウド時代と<クール革命>」、「オバマの作り方」、「著作権の世紀」、「アーキテクチャの生態系」「著作権2.0」。


「オバマの作り方」は気になっていて未読だったので。
ボクもアマゾンで発注しましたよ。


<追記>
「どの部分が津田さんの意見なのかが分かりにくい」という声があったので修正しました。
太字の表記が津田さんの意見の引用になります。(2010.06.14 12:40:00)