保育の実践力をUPするツールとしての記録(5) | Fuminori Nakatsuboのブログ

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保育・幼児教育の理論と実践に関する記事を投稿します。

見えない保育のアクチュアリティを捉える道具としての記録

 

 ドキュメンテーションとエピソード記述から私が学んだことは、記録を通して、見えない保育のアクチュアリティを捉えることの大切さである。

 例えば、私たちは、日々の記録から、どれほどの保育のアクチュアリティを捉えることができるだろうか。保育士が記す保育日誌の特徴について、井上(2009)は、その日の保育内容や保育士の感想などで終わっているケースが少なくなく、こうした日誌からは、子どもの表情、発見、成長、保育の着眼点、明日の保育へのつながりが見えにくいことを指摘するとともに、「なぜその活動をしたの?」「あなたはその活動のどこに注目していたの?」「そこからどんな気づきがあったの?」「子どものどんな姿からどんな育ちを感じたの?」「なぜ課題と思ったの?」「あなたはどんなふうにそれを感じたの?」など、保育士の中で生じた内的な変化を自分の言葉で表すことの重要性を主張する。

 つまり記録の意義とは、主体としての保育者が子どもとのかかわり合いの中で、何かを感じとったり、自分の気持ちが揺さぶられたり、子どもの心の動きを察知したり、対応に苦慮したり、驚いたり、うれしかったりなど、個々の瞬間における自分の感情を表現(言語化)する点にあるのであり、こうした記述の中に私たちは、保育のアクチュアリティを捉えることができるのではないだろうか。その日の保育の内容や子どもの活動過程など、目に見える保育の描写だけでなく、目に見えない自分自身の心の動きや解釈を吐露する描写の中に、子ども理解を深めたり、職員間での話し合いを醸成したりすることのできるエッセンスが含まれているのではないだろうか。

 

井上さく子 2009 「日々の記録を明日の保育へつなぐ」 『保育の友』 全国社会福祉協議会 第57巻 第14号 17-21頁

 

初出掲載誌:鹿保連通信(鹿児島県保育連合会広報誌) 第18巻 2010年