今日は日曜。

久しぶりに雅紀とデートなう。

っつっても本屋で大学受験のための参考書を買ってファミレスで昼飯を食って…。

ってチャリの後ろに雅紀を乗せてぷらぷら散歩タイムだ。

きゅってオレのお腹にしがみついた雅紀がその後の教習所はどうなのか聞いてきた。

仮免はパスして滞りなく路上教習にも出てる。

このまま順調にいけば夏休み前には免許が取れるはずだと言うと、ますます雅紀の手に力がこもるんだ。

ぽんぽんとその手を叩きながら雅紀の気持ちを汲み取った。

要するにこうしてチャリデートが出来なくなることが寂しいんだろ。

こうしてくっついてお互いの温もりを感じられなくなるのが寂しいんだろ。

それはオレも同じだよ。だけどさ、免許を取ったからと言ってチャリデートが出来なくなるわけじゃないじゃん。

｢な？分かるだろ？｣

｢ん｣

｢免許を取ったところで対して変わりゃしねぇよ｣

｢ん｣

ぴったりくっつく雅紀が可愛くて仕方ない。

雅紀の心臓の音もなかなかだけど、オレの心臓もバクバクしてる。

思わず付き合いたてのカップルかよってツッコミを入れたくなるくらいに心臓がうるさい。

付き合い初めて何回も季節を重ねてるのに、なんなら何回も体を重ねているのにいつまでもこんな気持ちになるのは雅紀だけなんだよな。

ぴぴぴぴぴーーーーっ！！！

不意に大きな笛の音が鳴らされた。

｢お兄ちゃんたち、自転車の2人乗りはやめなさい｣

｢はっ！？すみません💦｣

｢ごめんなさい｣

笛を鳴らした警官に声をかけられた。

いや、そりゃそうだわ。

おっしゃる通り。

｢兄弟仲良しなのはいいけど、ダメだぞ。話したいことがあるなら自転車を押しながらゆっくり話せばいいだろ。兄ちゃん、弟くんの悩みをちゃんと聞いてあげなさいよ？めっちゃ心配そうな顔をしてるぞ。弟くんのことを大切に思うなら2人乗りだなんて危険なことはやめて、歩きながら時間を大切にしつつ話を聞いてあげるもんだぞ｣

ゴソゴソと雅紀がチャリから降りると、にっこりした警官が言った。

｢はーい｣

｢しょーちゃ、ん…｣

右手で自転車を支え、左手で雅紀の手を捕まえてからその警官にペコってお辞儀をしてから歩き出した。

大切に思うなら…か。

なんか心の中に熱い火が灯されたような気がした。

｢な、オレんち、帰ろ｣

｢え？｣

｢ゆっくりしよ、2人でさ｣

｢2人？おばさんは？｣

｢いねぇ。いねぇけど、今日は何もしねぇ。ただ2人でくっついてよ｣

｢んっ｣

繋いだ手を大きくぶんって振ると、いつものような太陽みたいな笑顔を雅紀が見せてくれた。

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