オレの胸に顔を擦り付けながら雅紀はポツリポツリと話し始めた。

お父さんが勝手に本や参考書を持ち出していたこと。

模試の結果はＣ判定だったこと。

オレのことを聞き出そうとしたこと。

オレの腰に腕を巻き付けたまま肩を震わせて言葉を必死につないでいく雅紀の髪を撫でながら、ただただ頭を抱きしめることしか出来なかった。

｢まさ。ごめんな｣

｢なんで翔ちゃんが謝るの｣

｢B判定だったらご褒美くださいってオレのワガママでお前にプレッシャー与えたろ？｣

｢翔ちゃんのせいじゃない。俺の努力が足りなかったんだ｣

｢違うよ。お前は頑張りすぎると目の前のことしか見えなくなることを知ってるのにプレッシャーを与えたオレが悪いんだ｣

｢そんなことねぇもん｣

｢だったら……｣

｢だったら？何？｣

｢お前に頑張ったご褒美をあげるってのはどう？｣

｢え？｣

｢お前に試験勉強を頑張ったご褒美として、オレの時間をあげる。明日の朝までの時間をあげる｣

｢それって…｣

｢お母さんに行ってこい。今日は泊まるけどいいかって許可もらってこい。相手はオレだと言うか言わないかはお前に任せるから。な？｣

｢んっ、ありがと！｣

今の今まで泣いていたはずの雅紀が太陽みたいに笑ってる。

その笑顔がいい。

その笑顔ならお母さんとちゃんと話が出来るだろ。

頑張ったご褒美だけじゃない。

お父さんとの間に流れる空気で心を痛めているお前の力になりたいんだ。

お前がオレの太陽なら、オレは太陽の光を陰らせる雲を取り除く風になる。

お前の背中を押してあげられる風になる。

オレの胸の中で笑っているオレの太陽にキスをした。

Sounds of joy208