正月三賀日が明けて雅紀は出勤した。

オレはまだ4日間の冬休みがあるから陽翔も保育園はお休みして家で蒼翔と3人でのんびりだ。

まだ消毒をしたりガーゼを取り替えたりすることが必要な陽翔の手は包帯で巻かれているから自分で食べることは難しく、この状態で保育園に預けても好きな泥遊びも出来なければ手づかみでガツガツ食べられないから包帯が取れるまで保育園は休むことになる。

その旨を保育園に電話連絡をすると、対応に出たのりこ先生とあきこ先生がそれはそれは丁寧に対応をしてくれた。

どんな風に火傷を負ったのか。

どこの病院に何日入院したのか。

現状、どんな様子か。

火傷とともに発熱はなかったか。

食事は取れているか。

機嫌はいいか。

先生たちの質問に丁寧に応えていると、陽翔が声を発した。

｢ちゃーーちゃ！ちゃーーちゃ！｣

｢陽翔、ちょっと待ってなさい。今、のりこ先生とあきこ先生とお話してるから｣

｢あああ！うあー！ちゃーちゃ！｣

｢しー、しずかに｣

『うふふふ。陽翔ちゃん、元気そうですね？お話も上手になって。登園する時にはまた陽翔ちゃんの手の様子を見させていただきますね、どうぞお大事になさってください』

『陽翔ちゃん、またね』

｢あー！｣

｢ありがとうございます。失礼します｣

スマホに顔を近づけてくる陽翔に向けてのりこ先生もあきこ先生も声をかけてくれた。

｢つか。お前。『ちゃー』から『ちゃーちゃ』に進化したな｣

｢ちゃーちゃ！｣

｢わんわん！｣

クリクリの大きな瞳で腕の中の陽翔は蒼翔の鼻の頭をぺしぺししていた。

｢うーうー、うあああ｣

｢こらこら。かいたらダメだぞ｣

陽翔がむうううってしながら両手を擦り合わせている。若干イラついているのがすぐに分かった。

｢ううう！！うあああっ💢💢💢｣

｢痒いのはオレも分かるけどさ。我慢しないと治らねぇぞ？そうだ！陽翔、散歩に行くか！気分転換だ！｣

火傷の治りかけは皮膚が痒くなる。

皮もつっぱるような気がするし、ムズムズする。

オレも重度の火傷を負ったからその気持ちは分かる。

だけど我慢しろと言われても我慢出来ないのも分かる。

ましてや陽翔は1歳手前の子だ。

そんな子に我慢なんて出来るはずがない。

オレは雅紀が陽翔にって編んだマフラーを巻いてあげ、オレも火事の後に雅紀が編み直してくれたマフラーを自分に巻き、蒼翔にリードを付けてマンションを出た。

3人揃っての散歩は楽しいだろう。

陽翔の気分転換になるといい。

外に出るとベビーカーの陽翔はケラケラと笑いながら足をパタパタさせて楽しさを体全部で表現してくれた。

そんな陽翔の顔を覗き込んだり、オレの方を振り向く蒼翔も楽しそうだった。

まだ見ぬ世界へ130