蒼翔のしっぽに包帯でグルグル巻きの手を伸ばす陽翔。

蒼翔はそんな陽翔を振り向きながらゆっくり座り、しっぽをゆらゆらして遊んでやっている。

ケラケラと笑いながら蒼翔のしっぽをぺしぺしして、お腹の上にコロンとした。

そんな陽翔を蒼翔はしっぽでそっとなでている。

本当の兄弟以上の絆だと思う。

人間とか犬とか。

そんなの関係ないんだなって思う。

｢あーあ｣

｢きゅう｣

｢あーあ｣

｢きゅう｣

陽翔の声に蒼翔は返事をするんだ。

｢ねぇ。いつの間に陽翔は名前を呼べるようになったの？帰ってきてびっくりしたわ｣

｢うん。オレたちもビックリだよ。病院で『まー』とか『ちゃ』とか呼ぶしさ｣

｢あら？雅紀は『まー』なのに翔は『ちゃ』なの？｣

｢ははは。俺が『翔ちゃん』って呼んでるし、翔ちゃんも陽翔には自分のことを『翔ちゃん』って言ってるもんね？｣

｢いいだろ、別に/////｣

母さんと雅紀にちょっと冷やかされてむうううってしてると、こっちを振り向いた陽翔がにぱって笑った。

｢ちゃー！！！｣

｢はいはい～｣

一気に顔面偏差値がZEROになるのを自覚しながら陽翔の元へ行き、そのまま抱き上げた。

｢ちゃー、ちゃ｣

｢うん。翔ちゃんだよ？オレは翔ちゃんだ｣

陽翔の柔らかな頬に頬ずりすると、陽翔はケラケラ笑ったんだ。

｢もう翔は大丈夫みたいね？｣

｢ええ。病院の配慮で俺と過ごす時間をもらえましたから。少し陽翔と離れたことでより一層、陽翔のことが大切に思えたみたいだし、俺にもちゃんと甘えてくれました。俺も翔ちゃんを甘やかすことが出来て安心しました｣

母さんと雅紀のそんな話が耳に入ってきた。

｢母さん。入院中は蒼翔を見てくれてありがとう｣

｢お義母さん、ありがとう｣

｢いいのよ。私も蒼翔と一緒にいられたし、病院にもちゃんと行けたし…陽翔、おいで｣

｢ばーばっ｣

母さんに抱かれた陽翔はにぱっと笑ってからいつものドヤ顔でこっちを見た。

｢翔もよくこうして抱っこされてはドヤ顔してたわねぇ｣

｢うっせぇ｣

｢ひゃひゃひゃひゃひゃ！陽翔のドヤ顔は翔ちゃんゆずりだね｣

またむううつってすると、オレの顔を見た陽翔もそれを真似てむうううってした。

まだ見ぬ世界へ129