身長差のない恋人
「あれ、聞いてない」
セット転換の為に楽屋に向かう廊下でぼそっと小さな声で言われたのは、たぶん、いや間違いなくさっきの剛くんの話だ。
サシで飯に行って、俺が早々に酔っ払っちゃったって剛くんが言った途端、普段は無口なこの人が「へべれけ?歩けないくらい?」って、なかなかな顔で反応した。
あれ以上、この人が口挟まないように自分から剛くんの話に合わせていったけど、ゲームに目を戻す時、一瞬絡んだ視線の先には奥がまったく笑ってない瞳。
がっくりと落ちそうになる首を必死で起こして、ゲームに集中したけど時々刺すような視線を感じたから、絶対なんか言われるとは思ってた。
腹立つとか、ムカつくとか、お前いい加減にしろよとか、分かりやすく怒ることはしない智。波立つ感情は最後まで言葉になることなく終わることもあるくらい、この人は自分の感情をしまいこもうとする。
だけど腹立つし、ムカつくし、言いたいことは沢山あるから、こんなふうにぼそっと断片だけを言うんだ。
わかってるからこそ言えなかったし、ここでバレるかは一かバチかとは思ってたけど、予想したより機嫌悪いなーと思いつつ返事をした。
「うん。言わなかったね」
ピクっと智の頬が動いて、俺たちの前を歩いてる翔ちゃんがちょっと強ばる。
その隣の潤くんも聞いてないような顔しながら絶対聞いてる。
相葉さんなんか、完全に身体がこっち向いちゃってるし、角で曲がる時転ぶよって心配になる。
少しだけ緊迫感のある空気。
こんなふうになっちゃって、申し訳ないなーって気持ちはちょっとあるけど、俺にしてみればそんなに大したことないと思ってて、だって俺には俺なりの理由もあるわけで。
恋人であっても全部を話すわけじゃないし、全部を理解出来るわけでもないけれど、説明責任はあるってことはわかってる。
俺だってちゃんと智にはわかって欲しいし、その努力はしてきてるんだから。
それでも分からないことや、違うことがあるからこそ、ずっとそばにいられるし、ずっとこの人を好きでいられるとも思ってる。
ちらっとその顔を見たら口が尖ってて、相変わらず可愛い人だなぁなんて、どこまでも智を好きな俺の脳みそに笑う。
クスッと笑ってしまったらますます不機嫌になった智の右腕にぴったりと自分の左側をくっつける。
「んだよ。剛くんにもこうやってしたんだろ」
「うん」
「........」
「.........」
「で?」
「ん?」
言いたいことわかってるけど、たまには言葉で聞きたい。みんながいるけどそんなの俺達には関係ないでしょ?
「剛くんの隣りは良かったんかよ」
「.....どう思います?」
「.....俺より良いわけないだろ」
本当に可愛い人。
そんで俺の大好きな人。
「当たり前でしょ」
鼻がピクっとして、頬が緩む。
尖ってた口は優しく笑う。
目尻が柔らかく下がって、俺を嬉しそうに見る。
「だよな」
「はい」
不思議なくらいぴったりと合う肩と腕と手の甲が、互いの体温で暖かくなる。
強ばっていた翔ちゃんの肩はまたなでていき、潤くんは笑いを噛み殺してる。
相葉さんは顔を赤くして前を向いた。
「かず」
「なに?」
「なんでもない」
「ふふ」
もう、いつも通り。
話しかけるのが俺なのか智なのか、それが違うくらい。
身長差のない俺たちは、心の温度もあんまり差がなくて、いつだってお互いを感じられる。
他の誰にも分からないことも、口に出さなくてもわかってしまう。
若い頃はそれが嬉しくて、居心地が良くて、そこから恋になったけど。
今はその全てが俺を癒して、その全てが俺に影響していること、奇跡みたいだと思う。
前を歩く3人と、隣を歩く1人。
俺にとっての嵐。
そして何にも替えられない大切な人たち。
色々あっても、これからもずっと、きっとこんなふうに5人で生きていくんだろうなと思いながら智のケツを揉んでみた。
おしまい♡
「あれ、聞いてない」
セット転換の為に楽屋に向かう廊下でぼそっと小さな声で言われたのは、たぶん、いや間違いなくさっきの剛くんの話だ。
サシで飯に行って、俺が早々に酔っ払っちゃったって剛くんが言った途端、普段は無口なこの人が「へべれけ?歩けないくらい?」って、なかなかな顔で反応した。
あれ以上、この人が口挟まないように自分から剛くんの話に合わせていったけど、ゲームに目を戻す時、一瞬絡んだ視線の先には奥がまったく笑ってない瞳。
がっくりと落ちそうになる首を必死で起こして、ゲームに集中したけど時々刺すような視線を感じたから、絶対なんか言われるとは思ってた。
腹立つとか、ムカつくとか、お前いい加減にしろよとか、分かりやすく怒ることはしない智。波立つ感情は最後まで言葉になることなく終わることもあるくらい、この人は自分の感情をしまいこもうとする。
だけど腹立つし、ムカつくし、言いたいことは沢山あるから、こんなふうにぼそっと断片だけを言うんだ。
わかってるからこそ言えなかったし、ここでバレるかは一かバチかとは思ってたけど、予想したより機嫌悪いなーと思いつつ返事をした。
「うん。言わなかったね」
ピクっと智の頬が動いて、俺たちの前を歩いてる翔ちゃんがちょっと強ばる。
その隣の潤くんも聞いてないような顔しながら絶対聞いてる。
相葉さんなんか、完全に身体がこっち向いちゃってるし、角で曲がる時転ぶよって心配になる。
少しだけ緊迫感のある空気。
こんなふうになっちゃって、申し訳ないなーって気持ちはちょっとあるけど、俺にしてみればそんなに大したことないと思ってて、だって俺には俺なりの理由もあるわけで。
恋人であっても全部を話すわけじゃないし、全部を理解出来るわけでもないけれど、説明責任はあるってことはわかってる。
俺だってちゃんと智にはわかって欲しいし、その努力はしてきてるんだから。
それでも分からないことや、違うことがあるからこそ、ずっとそばにいられるし、ずっとこの人を好きでいられるとも思ってる。
ちらっとその顔を見たら口が尖ってて、相変わらず可愛い人だなぁなんて、どこまでも智を好きな俺の脳みそに笑う。
クスッと笑ってしまったらますます不機嫌になった智の右腕にぴったりと自分の左側をくっつける。
「んだよ。剛くんにもこうやってしたんだろ」
「うん」
「........」
「.........」
「で?」
「ん?」
言いたいことわかってるけど、たまには言葉で聞きたい。みんながいるけどそんなの俺達には関係ないでしょ?
「剛くんの隣りは良かったんかよ」
「.....どう思います?」
「.....俺より良いわけないだろ」
本当に可愛い人。
そんで俺の大好きな人。
「当たり前でしょ」
鼻がピクっとして、頬が緩む。
尖ってた口は優しく笑う。
目尻が柔らかく下がって、俺を嬉しそうに見る。
「だよな」
「はい」
不思議なくらいぴったりと合う肩と腕と手の甲が、互いの体温で暖かくなる。
強ばっていた翔ちゃんの肩はまたなでていき、潤くんは笑いを噛み殺してる。
相葉さんは顔を赤くして前を向いた。
「かず」
「なに?」
「なんでもない」
「ふふ」
もう、いつも通り。
話しかけるのが俺なのか智なのか、それが違うくらい。
身長差のない俺たちは、心の温度もあんまり差がなくて、いつだってお互いを感じられる。
他の誰にも分からないことも、口に出さなくてもわかってしまう。
若い頃はそれが嬉しくて、居心地が良くて、そこから恋になったけど。
今はその全てが俺を癒して、その全てが俺に影響していること、奇跡みたいだと思う。
前を歩く3人と、隣を歩く1人。
俺にとっての嵐。
そして何にも替えられない大切な人たち。
色々あっても、これからもずっと、きっとこんなふうに5人で生きていくんだろうなと思いながら智のケツを揉んでみた。
おしまい♡
R所長、R*さんいつも楽しいお祭りをありがとうございます♡
あとがきはあすの午後にでもコソッと出そうと思います(笑)