「おーちゃーーーん」
「さとしくーん」
「さとしー」
顔を上げると、僕にぶつかった男の子の後ろから、大きな声で誰かの名前を呼びながら走ってくる男の子が3人見えた。
「やべっ!おい、走るぞ」
「ふぇ?」
何が何だか分からないまま、綺麗な目の男の子に手を引かれて、道路を渡って海の方へ走る。
砂に足を取られそうになるけど、男の子が手をぐっと引き上げてくれて、僕は転ばずになんとかついていった。
もう海は目の前、波打ち際でピタリと止まった男の子。
僕は少し息が切れていたけどその子はへっちゃらみたいで、ちょっと威張った顔して後ろを振り返った。
「っはぁ、はっ、はぁ...」
「よっしゃー!俺の勝ちだー!」
「はっ、はぁ」
僕よりも息を切らして走ってきた3人の男の子達は、僕たちの目の前で止まった。
元気いっぱいって感じの男の子は僕を見て、目をキラキラさせてて、目がまん丸でちょっと小さいけど頭の良さそうな子は、膝に手をついてはぁはぁ言ってる。
その横にぺたっと尻もちをつくように座り込んだのは、女の子みたいに綺麗で華奢な男の子。
「おーちゃん、やっぱり速いねー。てか、誰?」
「さとしくん、次からはハンデね」
「はぁ....はぁ、はぁ...」
「だろ?いや、ハンデはいらねぇ」
「あんたがいらなくても、これじゃ勝負になんないじゃん」
「えー、しょうくんケチだな」
「はあ?!」
なんかよく分かんないけど、楽しそうに話してるのを見てたら、誰?って聞いた元気そうな男の子が僕のほっぺたをいきなりつついた。
「わっ!」
「わっ!!」
つつかれてびっくりして思わず声が出ちゃったら、つついたその子もびっくりしたみたいで僕より大きい声を出す。
その声に言い合いをしてた2人がこっちを向いて、何やってんだよまさき!とかって話し出した。
「なあ」
ぐっとつないでた左手を引かれて、まだ繋いだままだったことに気づいた。
僕の手を引いたその子は僕の目を真っ直ぐ見て
「おれ、さとし。おまえは?」
って、楽しそうに笑った。
つられて僕も笑いながら「かず」って名前を答えた。
「かずは、どこの子?引っ越してきたばっか?」
そう聞かれて思い出した。
僕、迷子になっちゃってたんだ。
思い出したのと一緒に、急に不安な気持ちもこみ上げてきてぽろっと僕の目から涙が落ちた。