部屋に入っても繋いだままの手を離そうとしないかず。
もう当たり前のように俺の部屋で眠るようになったかずを布団に座らせると、俺をじっと見上げる。
「どうした?」
「んーん」
ふるふると首を振って、ただ俺を見てる。
「眠くないんか?」
「ん」
「カーテン開けるか?」
急に冷え込んで来たから、いつも開けてたカーテンを今日は閉めてた。
かずは、月明かりが好きで。
眠れない時、ずっと月を見てた。
コクリと頷いたかずを見て、小さな窓のカーテンを開けた。
今日も月が冴えざえと光って、暗くした部屋の中をぼんやりと照らす。
支えるようにかずの後ろに座ると、俺にもたれてくるかず。
かずのお腹の前で手を組んで少しだけ俺の方に引き寄せた。
コテっと頭を俺の首に乗せて、月を見てる。
潤んだ茶色い目に月明かりが映ってキラキラしてて、無意識にかずのほっぺたにキスをしてた。
ふわっと俺の方を振り返ったかずが、その小さな左手を伸ばして人差し指で俺の唇を触った。
スルッとなぞるように触って、その指を自分のほっぺたにつけて、それからかずの唇にのせる。
少し笑って、俺を見る。
なんだよ、その顔。
あどけないのに、真っ直ぐに俺を見つめてて。
もしかして、キスを待ってる?
俺がかずに触れたくてしかたないから、だからそんな風に思うんかな。
だけど逸らされない目と、唇に触れたままの指がオレを待ってるように見える。
「かず.....」
「さと?」
「キス...していいか?」
「ん....キス...」
ゆらっとかずの瞳が揺れてゆっくり目を閉じたから、スベスベの頬を撫でてそっとキスをした。
かずの手がそろそろと俺のシャツを握って、小さく「んっ」て声が漏れる。
押しつけたり、離したり、ギリギリ触れるようにしたりしてかずの唇を感じてた。
驚かせたくないから、深いキスは我慢してて。
俺って意外と我慢強いんだななんて、自分に感心したり。
ぎゅっと抱きしめると、安心したように身を寄せてくれるかずが嬉しくて、抱きしめたまま横になる。
かずの空っぽになった心を、温かいもので満たしてやりたいと思いながら何度も何度もキスをした。