窓を風が揺らす音がする。
今日は潮風が強いらしい。
時計を見るとまだ6時半で、早起きだなって思った。
「かず。いつから起きてた?」
「..........」
「まぁいっか。また昼寝すればいいもんな」
「..........」
かずに着替えを渡して、俺もさっと着替える。
今日の朝ごはんはどうするかなぁって考えながら、かずと手を繋いで台所に降りた。
せっかく早く起きたから、まず米を研ぐ。
炊飯器をセットして、味噌汁は簡単なのでいいって思って、豆腐とワカメにする。
いつもかずが作ってくれてた少し甘めの玉子焼き。
砂糖を多めに入れて作って端っこを味見したら、ちょっと違うけど、まぁいいだろ。
なんかおかず少ねぇかなって冷蔵庫を見たら、しば漬けがあったからそれを出して。
棚にあった味付け海苔もテーブルに置いたら炊飯器がピーピー鳴った。
かずはまたあの小さな椅子に座って、明けていく空と海を見てる。
やっぱり風は少し強いみたいで、庭の木が揺れてるけど、空は青くて澄んで。
海は今日もキラキラ光ってた。
ダイニングテーブルに3人分の玉子焼きと味噌汁とごはんを並べていく。
かずが作ってる時は、かずの分は並ばない。
いつもみんなの分を並べて、おかわりとか給仕役に徹してる。
俺はそんなかずと2人で朝ごはんを食べたくて、時々かずの食べてるのを見てた。
食べ物になんか1ミリも興味の無さそうな、つまんなさそうな顔して食うんだ。
だけど無意識に口元が緩んで、柔らかい顔を見せる時があった。
あれは、何かを思い出してたんだろうか。
その顔を見るのが好きだった。
あんなに美味くなさそうに食うのに、かずの作るごはんは温かくてめちゃくちゃ美味い。
それもとても不思議だと思ってた。
俺が作った朝ごはんを並べ終わる頃、珍しく潤が自分で起きてきた。
すげぇぼーっとしてるけど、挨拶はする。
ぼーっとしたままダイニングテーブルに座って、かずに声をかけてる。
「ニノ、おはよう。海見てんの?お前そこ好きだよね」
「..........」
かずは返事をしなかったけど、潤も何も言わなかった。
「かず、朝ごはん食べよう」
「..........」
かずの後ろに立って声をかけたら、ふわっと立ち上がってダイニングテーブルに向かった。