相葉さんと櫻井さんが出かけて行って、戸締りを確認してからココアを持って2階に上がった。
「熱いから気をつけろよ」
そう言ってマグカップを置くと、両手でマグカップを持って、ふーふーって息を吹きながら少しずつココアを飲んだかず。
その仕草が小さな子どもみたいで可愛かった。
ゆっくりとココアを飲み終わると、またスケッチブックを開いて、相変わらず話さないけど、それでも俺の隣で飽きもせずに見てた。
俺は今見たばっかりの相葉さんを描きたくなって、サラサラと相葉さんの絵を描いてた。
かずはチラッとその絵を見て、また手元のスケッチブックに目線を戻した。
黙っていてもかずと2人なら、幸せだった。
そんな呑気なこと言ってる場合じゃないんだけど、かずはなんにも話さないし反応も薄いけど、それでも2人で居ることが大事だって思えた。
2枚相葉さんの絵を描いて、その後はまたかずの絵を描いてた。
出会った頃の棘だらけだったかず。
松にいと笑ってたかず。
砂丘で海を見てたかず。
記憶の中のかずも、今はモノクロに見える。
また鮮やかな色のかずを描きたいと思った。
いつの間にか外は暗くなってきてて、俺は夕飯の支度を始めた。
かずはリビングの窓のところで、いつも座ってた小さな椅子に座って暗くなっていく海を見てた。
潤はバイトで遅い日だったから、夕飯はまた雑炊にした。
かずはお昼のスパゲティは、あんまり食べられなかったから。
赤味噌を使って味噌雑炊を作る。
かずは朝と同じように、大きめの茶碗に1杯分食べた。
食後の薬を飲ませて、風呂に入ったかずの髪をドライヤーで乾かして。
触れられる事が幸せだと思った。
俺が風呂に入ってる間にソファーでウトウトしていたかずを起こして、一緒に歯磨きをして2階に上がる。
布団の冷たさにちょっとビクっとしたけど、抱きしめて背中を撫でる間にスヤスヤと眠った。
昨日のかずを思い出して、今日は眠れて良かったと思う。
身体をちゃんと休めないと、気持ちも元気にならないって俺は思ってて。
色んな外国に行って、それぞれの国で色んな人と話したけど、パワフルで元気な人はみんなよく食べて、よく寝て、よく動く人たちだった。
その中に日々の生活があって、仕事があって、仲間が家族がいるって、そんな風に生きてる人たちが沢山いた。
かずとそうやって生きていきたいと思った。
抱きしめたかずからいつもの甘い匂いがして、
少し高くなった体温が俺の眠気も誘う。
眠るかずのおでこにチュッとキスをして、俺もそのまま眠った。
翌朝俺が目覚めると、俺の腕に抱かれたままのかずはもう目を開けてて、俺の顔をぼんやりと見てた。
「おはよ、かず」
かずを抱きしめたまま、ぐっと腹筋に力を入れて2人で起き上がった。