「お疲れ様でしたー!!」
「お疲れ様でした。ありがとうございました」
沢山のお疲れ様でしたって声に送られて現場を後にした。
春から続いた撮影もやっと終わって、嬉しいような寂しいような気持ち。
ひとつの仕事が終わるといつも思う。
全部出しきれたかな?
やれること全部やれたかな?
もちろん、俺の答えはいつもイエスで、だけどまだまだ課題があることだって分かってる。
楽しめたよね。
御前様な日々を精一杯生きた。
幸せだったな。
素直にそう思えた。
今日はきっと待っててくれてるよね。
衣装を脱いでメイクを落として、相葉雅紀に戻る。
いつもの俺の服を着て、鏡を見たら少しニヤけてる。
だって、しょーがないじゃん。
久々に恋人に会えるんだもん。
撮影のスケジュールは、タイトで。
ほかの番組の撮影だってあるし、大阪でのイベントの打ち合わせや準備もあって、ここのところ全然会えてなかった。
ううん。
仕事では会ってた。
だけど恋人の翔ちゃんには会えなかった。
抱きしめることも、キスすることも、愛し合うことも出来なかった。
スマホには一時間前にメッセージが入ってた。
『雅紀の家にいる』
『あ、お疲れ様。気をつけて帰って来いよ』
それで、チャラいうさぎのスタンプ。
うえーいってしてるやつ。
全然可愛くないスタンプだけど、なんか面白いんだよね。
翔ちゃんの趣味って、相変わらずちょっと面白い。
『今から帰るね』
一言だけ返事をした。
ハートマークがいっぱいのスタンプを押しておく。
翔ちゃんは、意外とこんなのが好きだから。
すぐに既読になったと思ったら
『お前、可愛い』
だって。
違うよ...翔ちゃん。
俺の欲しいのはそんな言葉じゃなくて
玄関のドアが閉まるのも我慢出来ないくらい、俺のこと欲しがってよ。
堪んねぇって顔見せてよ。
『翔ちゃん、いっぱい愛して』
『バカ.....寝かせてやんねぇぞ』
うん。
俺が欲しいのは、そんな翔ちゃん。
ギラギラしたオトコの顔見せて。
そしたら俺は、また満たされて明日を歩いて行けるから。
「お待たせ。帰ろう」
廊下のマネージャーに声をかけて歩き始める。
翔ちゃんに会えるまで、あと少し。
おしまい♡