慌てたままリビングへ行くと、かずがソファーに座って水を飲んでた。
隣に行ってボスっと座ると「はい、これ」ってローテーブルに置いてあったもう1本のペットボトルを渡してくれる。
湯上りのほんのりさくら色のカズ。
マジで綺麗だなって思いながら受け取った。
「うまっ」
「ふふ。喉乾いてたでしょ?」
「ん、うん。めっちゃ乾いてた」
「ありがとね。俺のお世話してくれてたから暑かっただろうなぁって思ってた」
「あー。うん。それは確かにそうなんだけど、カズの世話をやけるのは俺としてはかなり嬉しいから、それは気にしないでほしい」
「うん。わかってる。しょーちゃんのなんだろ、やってあげられる事なんだよね」
「そう。家の片付けとか飯の支度とか洗濯とか掃除みたいな事は、俺にはほとんど出来ないからさ。やってやれる事はしてやりたいし、カズのこと守りたいと思ってるから」
「ありがと。いつも守ってくれてるよね。俺には甘いってみんな言ってるよ?」
ニコニコと俺の話を聞きながら、時折ペットボトルの水を飲んで、上目遣いで話すカズ。
無意識の上目遣いもやめさせないとって思うんだけど、これもたぶん、言っても治らないんだろうな。
ニコニコしたまま、ソファーに座ってゆらゆら左右に揺れてる。
少しずつ瞼が下がって、もう眠ってしまいそうだ。
「カズ」
「んー?」
「眠いんだろ?」
「ねむくないよ.....」
「目、瞑ってるじゃん」
「わざとですぅ」
「ほら、寝よう」
ウトウトしてるカズを横抱きにして抱き上げたら、するりと首筋にカズの腕が絡む。
擦り寄ってきた頬に一つキスをして、そのまま寝室に運んで寝かせた。
白雪姫みたいだな
とか、俺、何考えてんだろうな。
カズはもちろん男だし、ただその割には華奢で可愛いところがあって、こんなふうに眠ってると男とか女とか関係ないなって改めて思う。
この瞳が開いた時、俺を写してほしい。
そう思うことが、全てのような気がする。
仕事まであと数時間。
布団をかけるともぞもぞっと動いて、ふぅーっと力が抜けた。
そのカズの隣に滑りこんで、そっと、そのふわりとした唇にひとつキスをして。
「おやすみ」
俺の声が聞こえたのか、少しずつ微笑んだように見えたカズを抱き寄せて、俺も眠りに落ちた。
おしまい