「おかえり、しょーちゃん」
合鍵で入ったカズの部屋。
いつものようにリビングの扉を開けると、ソファーから立ち上がって俺のところに来てくれる愛しい俺のコイビト。
「ただいま」
「お疲れ様、ご飯は食べた?」
「うん。蕎麦食べた」
「じゃあ、お風呂入ってくる?もう入れるよ」
俺の世話を焼いてくれるカズが愛しくてしかたない。
俺のカバンを受け取って「重っ!」て言いながらいつも通り、リビングの小さなサイドテーブルに置いてくれる。
「カズはもう入ったんだよね」
「うん。今日ちょっと汗かいたから、帰ってきてすぐ浴びちゃった」
もう完全に部屋着のテロっとしたシャツと短パンのカズからは、ボディーソープの匂いがする。
ギュッと抱きしめて匂いを吸い込んで風呂に向かった。
「カズ?」
風呂上がりのリビングにカズがいなくて、あれ?って思いながら冷蔵庫の水を飲んで、髪をタオルでゴシゴシ拭きながら寝室へ行った。
寝室の扉をガチャっと開けると、ぼんやりとしたダウンライトの中に、カズの後ろ姿が浮かび上がる。
ベッドの上に小さな子どもみたいにぺたんと座って下を向いて何かしてる。
扉の音に気づかないカズじゃないから、何か作業に夢中なんだろう。
そっと近寄って手元を覗き込むと、枕カバーを付け替えてるらしい。
ハンバーグみたいな小さな丸っこい手が、器用に動いて枕を整えてる。
「カズ.....」
名前を呼びながら後ろからそっと抱きしめた。
ピクッと震えて、振り返ったカズはなぜか少し恥ずかしそうな顔をしてる。
そんな顔ダメだろ?
ただでさえ今日は優しくしてやれないかもしれないって思ってたのに、俺の中の加虐心がチロチロと燃え上がる。
泣かせたい。
ポロポロ落ちる涙で濡れる瞳が見たい。
甘く溶かして、それでも泣いてしまうカズを見たい。
俺のそんな気持ちなんか、きっと気づいていないカズは、恥ずかしそうに目を伏せて
「あの、枕カバー替えるの忘れてて.....しょーちゃん何か飲むでしょ?リビング戻ろ.....」
少しだけ小首を傾げて俺に話しかけるカズの手首を掴んで、そのまま覆いかぶさるとその手首をベッドに押さえつけた。
「しょーちゃ.....」
何か言おうとするカズの唇を俺ので塞いで、キスをした。