「カズ」
「う...ん...」
「おはよう、カズ」
俺の腕に抱かれて、そのハンバーグみたいな手で目を擦ってるカズは、破壊的に可愛い。
ぐしぐしっと目を擦って、ゆっくりと開いていく瞳。
指に少しの違和感を感じてるみたいな仕草。
視界に俺を捉えると、花が溢れるように笑った。
「おはよ、しょーちゃん」
「おはよう」
チュッとキスをひとつすると、いつもの恥ずかしがるカズじゃなくて、幸せそうに笑うカズ。
寝起きのカズは、びっくりするほど素直で可愛い。
俺を見つめてふふっと笑ってもぞもぞと動いて、指の違和感を確かめるように左手を開いて目の前にかざした。
ぼんやりしてた瞳が、パッと開いてポロポロと涙を零し出した。
「しょ.....ちゃん、これ...」
「うん。カズ、俺と結婚してくれる?」
「嘘だ...」
「なんでだよ」
「だって.....」
ポロポロ涙を零しながら、悲しそうに笑うカズ。
なんでしんじてくれないんだよ。
俺は、本当にカズが欲しいんだよ。
ベッドの上で起き上がってカズに訴えかけると、同じように起き上がったカズは、俺の前にちょこんと座った。
「俺たち男同士だよ?結婚なんてできないじゃん」
「今はな。だけどいつか同性でも結婚できるようになったら、俺と結婚してほしい」
「だけど、しょーちゃんは.....ちゃんとした女の人と結婚しないとダメでしょ?」
震える声のカズ。
お前、そんなこと思ってたの?
いや、カズだもんな。考えてたに決まってるよな。俺の家のこととか、男同士ってこととか。
「それは、大丈夫。親もこの仕事してるんだからそこまで望んでない。カズとのことも、いつかちゃんと認めてもらいたいと思ってる」
「そんなの.....無理...」
「無理じゃない。本気なら、できる」
「しょーちゃん.....」
涙でキラキラ光る目を見つめて、気持ちが伝わるように真剣に告げる。
「カズ、俺と結婚してくれますか?」
じーっと俺の目を見つめ返して、コクリと頷いて
「はい」
小さな声で答えてくれた。
カズにプロポーズをしたあの日の夢を見てた。
「櫻井さん、着きましたよ」
「ん?ああ、ありがとう」
「明日は10時に迎えに来ます」
「了解。お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
仕事終わりにマネージャーの運転する車で眠ってしまった。
いつものようにカズの家に送ってもらって、明日の時間を確認して車を降りた。