「あのさ、俺、好きとかあんまり言わないじゃん。それってやっぱりやだ?なんかさ、言おうと思うんだけど、恥ずくて言えなくて。だから、智が不安になったんだとしたら、俺のせいなのかもしれないって、そう思った。だから、フラれるのかなって思ったんだけどね」
かずは堰を切ったように話して、ひとつ息をしてからおいらを見た。
「俺、智のこと好きだよ。たぶん、智の母ちゃんより好きだよ」
「かず.....」
「好きだよ、智。俺のこと放ったらかして釣り行っちゃっても、他の人とばっかりご飯行っても、智を好きな気持ちは変わらないよ。あの頃と変わってないよ?」
涙を纏った色素の薄い目
真っ白な肌
赤い唇
誘うようなアゴの黒子
泣いてたせいで、少しだけ体温が高くなったんだろう。
かずの爽やかな香りが、甘く変化して匂い立つような色気がおいらを包む。
不安そうに揺れる目には、おいらが映ってる。
その目を見つめて、ゆっくりと顔を寄せるとそっと目を閉じた。
かずの見た目より柔らかい唇に、おいらのを重ねる。
いつもと同じようにぴったりと重なって、やっぱりかずとおいらは2人でひとつなんだと思う。
重ねた時と同じようにゆっくりと離れた。
とんでもなく甘いかずの告白。
それを聞いて、おいらは嬉しくて堪らなくて。
こんなにおいらを好きでいてくれるのに、おいらはバカみたいに不安になって、かずを泣かせたなんて後悔してるのに、それでも嬉しい気持ちは隠せなくて。
思い出すのは、おいらがかずに好きだって伝えた時のこと。
あん時も、薄茶色の目からポロポロ涙を零して、頬を赤く染めて嬉しそうに笑って。
『俺、おーのくんのこと、ずっと好きだよ』
って言ったんだ。
お前、本当にずっと、おいらのこと好きでいてくれてたんだな。
ゆっくり上がる瞼の下の目は、やっぱり涙で潤んでた。