「カズ、どうした?」
俺の様子に気づいた?
潤くんが少し緊張してるように見える。
ゆっくり近づいて、潤くんの前に立った。
俺より背の高い潤くんを、少しだけ見上げる形で目を見る。
「潤くん、好きだよ。ずっと好きだった。言わないつもりだったのに、ごめんね。大好きだよ.....」
精一杯だった。
俺の全部。
潤くんへの想い。
言ってしまった。
潤くんは、何も言わない。
怒った顔も、困った顔もしてなかった。
それが、嬉しくて悲しかった。
俺の気持ちは、潤くんを揺らすことも出来ないものだったんだと、わかってしまったから。
「潤くんごめん。ありがと。.....スッキリした。もう、こんなこと言わないから今日だけ許して.....」
言うだけ言って、潤くんに背中を向けた。
鼻の奥がツーンとする。
ダメだ。
泣くな、俺。
いつも通りに見えるように、1歩いっぽ歩く。
言えたんだ。
それだけで充分じゃん。
一生、言えないと思ってた気持ちを言えた。
少なくとも、気持ち悪いとは言われなかった。
すぐさま否定されたりしなかった。
それだけで...
それだけで充分だよ。
もしも言えたら、そんで砕け散ったら、智が飲みに付き合ってくれるって言ってたなぁなんて思い出すけど、誰かと飲むほどの元気無いよ。
俺の中でゆっくり朽ちていくはずの気持ちを言ってしまったから、この先は、このままこの気持ちを持ち続けることは難しい。
潤くんに負担にならないように、この気持ちを無かったことにしないと。
滲みはじめる視界。
必死に堪えて、息をするのも鼻水の音に気をつけて、あと少しで自分の送迎車ってところで、後ろから走ってきた足音に気づいた。
気付かないふりをしたまま送迎車のドアに手を伸ばす。
その手をグッと握られて、グイッと引っ張られる。
ぽすんと抱きしめられたのは、潤くんの腕の中。
一瞬だけ感じた体温に、もう逆上せそう。
車の中のマネージャーに
「カズ、俺ん家に来るから。明日の迎えは俺ん家にな」
って。
どうゆうこと?
俺、潤くんの家に行くの?
どうなってるの?
何が起きてるの?
潤くん。
さっき抱きしめられたのは、夢?
それとも現実?
俺の返事なんて聞く気もない潤くんの後ろ姿を見ながら歩く。
繋いだ手から潤くんの熱が伝わってくる。
このまま、ずっと歩いていられたら良いのに。
繋いだ手。
幸せだと感じる心を止めることなんて、もう出来なかった。