「はぁー」
タクシーの後部座席。
シートに背をつけて座った。
潤くんとふざけながら、笑い合いながら手を振って、エスコートされるみたいにタクシーに乗せられた。
その時、一瞬だけ俺の首に触れた潤くんの指先が熱くて、走り出したタクシーの中から振り返って潤くんを見た。
潤くんは、もう乗り込むタクシーに目線を向けていて、どんな顔してたのか分からなかった。
「はぁー」
もう1度息を吐いた。
潤くん。
大好きだよ。
大好きだったよ。
1度も言えなかったけど、俺はずっと潤くんを好きだった。
今も好きだけど、それはもう心の奥に蓋をして、しまっておこうと思う。
潤くんも俺も 、嵐だから。
嵐を大切に思ってるから。
それで充分。
それだけで充分だよ。
いつか、潤くんの恋を祝福出来たらいいな。
今日は結局、おめでとうとは言えなかった。
『そうなんだ、良かったね』
それが精一杯だったよ。
潤くんはすごく落ち着いてて、浮かれた惚気を言ったり、はしゃいだ様子を見せたりしなかったけど、それが返って相手の人を大切にしてるってことを表してるみたいな気がして、俺は泣かないように必死で喋った。
うんうんって、頷いてる潤くんに俺の話をしたけど、嘘だってバレなかったからホッとした。
彼女がいるなんて。
ヘタクソな嘘。
潤くんが相葉さんや智に聞いたら、すぐにバレる嘘。
ずっと彼女なんて居ない。
噂になった子はいたけど、全部嘘ばっかり。
俺が一緒にいたのは智で、智とは付き合ってもいなくて。
こんなに苦しい恋になるって分かってたら、智の気持ちを受け入れてた方が良かったかな?なんてズルイこと考えて、うんざりした。
目を閉じて、涙が零れないように必死で堪えた。
タクシーが家に着くまで、目を開けることは出来なかった。