それは、ゆっくりだけど
あっという間の出来事だった。
少しずつ薄い色になっていく空。
水平線に色がついて、光の筋が伸びていく。
光が滲むようにゆらっとしてぶわっと広がったら、伸びていた光の線が真ん中へ戻っていく。
そのまま水平線から離れて、陽が昇っていった。
初めての光景に見惚れてしまって、さとしの腕がしっかりと俺を包んでくれていたことに気づいてびっくりした。
さとしは、俺の背中に半分重なるくらいの位置で俺を抱きしめていて、左肩に顔が乗ってる。
その顔を覗いたら、目が涙でうるうるしてて堪らなく可愛かった。
心の中で愛を誓って、射し始めた光の中で、そっとさとしにキスをした。
誰かに見られるかもとか、また相葉さんにからかわれるかなとか思ったけど、そんなことより、俺の中にあるさとしへの愛を、今すぐ伝えたかった。
チュッて離れた俺の頭を、さとしの綺麗な手が引き止めて、さとしからのキスを受ける。
好きだよって、愛してるよって、言われてるみたいな唇を合わせるだけのキス。
「明けましておめでとう。和」
「さとし、明けましておめでとうございます」
唇を離して優しく言われたら、幸せでいっぱいになる。
俺がさとしの言葉で幸せを感じたように、さとしも俺の言葉で、態度で幸せを感じてくれたらいいな。
智の腕の中で、すっかり青くなった空の色を見ながら、小さな声で2人でコソコソと話をする。
「ニノちゃん、おーちゃん。明けましておめでとう」
「ふたりとも、明けましておめでとうございます」
遠慮がちに、相葉さんと翔さんの声がして、ちょっと恥ずかしかった。
『明けましておめでとうございます』
二人揃って明けまして挨拶をして、夜明けの美しさをさとしが話してる。
「おいら、和の顔をみながら、日の出も見てたから、忙しかったけどすげえ綺麗だった」
色のコントラストが変わってきて、世界がモノクロから、カラーに変わるように色づいて行くのが、和と同じだとかなんとか、一生懸命話してる。
本当に楽しそう。
さとし、連れて来てもらって良かったね。