勝手なこと言って、勝手に納得したみたいな顔して、勝手に出て行こうとしてるかずを捕まえた。
「待てよ」
「なによ?」
「なによ?じゃねえ」
「あなた、何も言わなかったじゃない。それが答えなんでしょ?」
「違うわ!お前は、なんでそんなにせっかちなんだよ。少しくらい、ゆっくり考えさせろ」
「考えなきゃいけないくらいなら、むりでしょ?それくらいの気持ちなら、どうせダメになるよ」
「お前、なんでそんななんだ」
「そんなって?」
「なんつーの?余裕ないっつーか、せっかちすぎるだろ?」
「そんなこと.....」
なんとなく困った顔をしたかず。
ここが、正念場だ。
今、納得してくれなかったら、たぶんかずの俺に対する信頼は崩れさる。
そしたら一生かけても、もう俺をちゃんと信頼してくれることはないだろう。
俺を全面的に信じて、受け入れて、常に俺の味方だったかず。
そんな信頼の寄せ方を、こいつが他の誰かに見せることは無い。
家族とメンバーくらいなもんだろ。
それでも俺に対するそれは、素直じゃないかずの独占欲を含んで、やっぱり特別なんだよ。
俺は、その優しい空気にいつも包まれて生きてきたんだ。
こいつと出会って、文字通り恋に落ちて、それからずっとずっと、こいつの重いくらいの愛に包まれて生きてきたんだよ。
今さら、勝手なこと言ってんなよ。
俺のこと放り出すんか?
そんなの
そんなこと
「..........許さねえ」
「え?」
「許さねえ」
「は?なに?」
「俺のこと、今さら放り出すとか、許さねえ。かずがいないと居られないくらい、お前の愛情で甘やかしといて、今さら1人にするなんて、絶対、許さねえ」
「そ.....んな......の..」
「お前が嫌でも、俺は離れないからな」
「おーのさ...」
「だから!さとしだろ!!」
ポロポロポロッと飴色の瞳から透明な雫がこぼれ落ちる。
なあ、何考えてんだ?
なんで俺と離れようと思った?
いつもなら、感情の揺れる目が、今日は驚くほど色が無くて、泣いてることよりもその事に驚く。
「お前は天邪鬼だし、わかりにくい話し方するけど、俺にはいつもちゃんとわかるように言ってくれてたじゃんか」
「...........」
「やっぱ俺のこと、嫌いになったんか?だから、もう話すのも嫌だってことなのか?」
「.......ら...ない.....」
「え?.....なに?.....」
「嫌いじゃない.....嫌いになんかならない....なれなかった........」
お前、今なんて言った?