お蕎麦屋さんを後にして、また山道に戻ると今度は少し行ったところにある小さな温泉宿に着いた。
「はい、着いたよ」
「え?ここって.....」
「うん。温泉宿なんだけど立ち寄り湯もやってて、大晦日は夜中までやってるって聞いたから、予約しといた」
「え?翔くん、温泉って予約いるのか?」
「ああ、ごめん。言葉が足らなかったね。貸切の露天風呂があるんだよ。そこをね借りてる」
「でもかずは、みんなとは入らないぞ」
「わかってるよ。ちゃんと2つ借りてるから、安心してよ」
「ならいい」
かずくん良かったねーって、妙に浮かれる相葉さんと、全部わかってるみたいな顔してる翔さんに見られて、恥ずかしくって仕方ない。
さとしは当然って顔で、なんならドヤ顔に見えるくらいの顔してるし、もう!俺どんな顔したらいいのさ。
困惑したままの俺を引きずるように宿に入って、翔さんが宿の人と話すと、何故かみんなで客室に通される。
「しょーちゃん、お風呂じゃないの?」
「ん?ちょっと待ってな」
ソワソワ落ち着かない相葉さんと、いつも通り落ちつきまくってる翔さんの後ろを、さとしに手をひかれて歩く。
「どうぞ、こちらのお部屋です。お時間までお寛ぎ下さいませ」
案内してくれた仲居さんは、お茶や備え付けの備品の説明を軽くすると、スッとお辞儀をして部屋から下がっていった。
「しょーちゃん!どうゆうこと?」
ワクワクしちゃって、目がキラッキラの相葉さんがかじりつきそうな勢いで翔さんに迫ってる。
翔さんは慣れた様子で相葉さんの背中をトントンして
「あのな、貸切露天風呂って時間制なの。だから予約の時間までとその後少しを、専用の客室で寛げるようにってゆう、ここの宿の気遣いって言うのかな。そうゆうこと」
「え?あ、じゃあ、お風呂はまだ時間じゃないってこと?」
「そう」
「だからここで待ってるってこと?」
「そう」
「お風呂の後は、浴衣とか着てこの部屋に戻って少しのんびりできるってこと?」
「そうです」
「しょーちゃ.....」
「翔くんすげえっ!!」
相葉さんの感激の声を遮るように大声を出して、相葉さんが抱きつこうとしてた翔さんに抱きついたのは、さとしだった。
びっくりして固まる翔さんと、思いっきりブーたれてる相葉さんがおかしくて、ダメだ.....笑うの我慢できない.....。
ごまかせないとは思ったけど、バレないように下を向いてたのに、あっさり相葉さんに見抜かれて
「ニノちゃん笑うなんてひどいー!!」
と、散々文句を言われたけど。
やっぱり面白すぎて、お腹が痛くなるまで笑ってしまった。