茅葺き屋根のそのお店の暖簾をくぐって、磨りガラスの引き戸をガラガラと引いて中に入る。
お店の真ん中に囲炉裏があって、そこを囲うように大きなテーブル席がある。20人くらい座れる大きなテーブルには、3,4人くらいのグループの人達が何組か座ってて、美味しそうにお蕎麦を食べてる。
その周りに2人から6人掛けのテーブル席が10席くらいあって、2席を残して満席になってる。
その2席も予約席の札が乗ってて、本当に人気のお店なんだとびっくりする。
「こんばんはー。予約した櫻井です」
「いらっしゃい。今日はまた可愛い2人を連れてきたんだねえ」
「でしょ?自慢の友達なんです」
「あんた、自慢ばっかだねえ」
「そうかな?」
「だって、あんた。このお兄ちゃん連れてきた時も自慢の恋人って言っとったもんねえ」
「あれ、そうだった?」
「そうだった。ほら、そこの席ね」
「うん、おばちゃんありがと」
お店の人と親しげに話をして、俺たちを席に案内してくれる翔さん。
やっぱりやり手の人は何でも卒なくこなすんだなあと、感心してしまう。
翔さんや潤くんは、俺のことちゃんとしてるとか、なんでも出来るよなーとかって言ってくれるけど、だってさとしの役に立ちたいから。
だから、頑張れたしこれからも頑張りたいと思う。
さとしがそんなの関係なく俺をそばに置いてくれることも、必要としてくれてることも分かってるからこそ、俺もさとしの為にしてあげたいことが沢山になるんだ。
翔さんオススメの天ざるそばと、鴨汁そばか、温かい天ぷらそば、どれにする?ってみんなでメニューも見ながら話してる横で、ちょっとだけ考え事に夢中になっちゃったな。
ざるそば上手いんだよなーって悩んでる翔さんに、相葉さんが温かいのと半分こする?って言ってる。
さとしは少し口を尖らせて、うーんって声を出してる。
声出ちゃってるの気付いてるかな?
ふふ、可愛い。
「さとし、どうする?」
「うーん。普通に天ぷらそばも良いけど、鴨汁も捨て難いよなあ。かずは?」
「うーん。鴨汁かなあ。好きなんだよね」
「そうか、じゃーおいらも鴨汁そばにしよ」
「え?いいの?」
「おう。同じもん食ったら、あとで色々話せるだろ?味とか量とかの事もさ」
「そう.....なんだ......」
なんか、恥ずかしい。
すごい、甘い顔で甘いこと言うんだもん。
「相変わらず、ラブラブだよねー」
向かいの席の相葉さんに言われたけど、違うとか言えなくて、さとしの肩をパンチした。