泣いてる相葉ちゃんを無理やりどけることは、出来なくて仕方なく足を止めた。
親友と同じ上目遣いで俺を睨む相葉ちゃん。
時々、驚くほど仕草が似てる。
ジュニアの頃シンメで踊ってたことが、こんなにも長く影響するなんて不思議な気もするけど、この2人ならそれもありうる。
自分のことより相手のことを優先するところなんて、本当によく似てる。
その相葉ちゃんが、俺を泣きながら睨んでる。
参ったなあ。
弱いんだよ、その上目遣い。
それにさあ、相葉ちゃん泣かすと怒るのがいるじゃん。
それもめんどくさいし。
ほら見ろ。
翔くんのあの顔。
俺の事殴りたいって顔だなあれは。
めんどくさいんだよ、翔くん真面目だから。
あー、ジーーーっと見てるよ。
頭ん中フル回転してんだろうな。
とりあえず無視しとこう。
で
1番厄介なのが、俺の前まで来た。
「あんた、カズに何言った?」
俺の意見を聞く気はあるのか?
始めから悪いのは俺だって決めつけてるだろ、その言い方は。
昔みたいなイライラを全面に出した顔。
こいつとかずの信頼関係は、俺がイラッとする事があるくらい強い。
潤はどんな時でも、必ずかずの反応と様子を確認してる。
ピンチの時は2人でササッと話して対応してしまう。
それを受けて回していくのは翔くんだ。
あー、なんか落ち込んできた。
「おい、聞いてんのかよ。カズに何言ったんだ?あんなカズ、滅多にないじゃん」
突っかかってくんなよ。
「おい。聞いてんのかよ!」
「うるせーよ!俺もムカついてんだよ!」
怒鳴り返した俺に一瞬ビクッとした潤。
その後ろから
「なんで、かずくん泣かせるのっ」
相葉ちゃんの悲鳴みたいな声が聞こえた。
「智くんさ、何があったの?あんなにニノがピリピリする事って滅多にないじゃん」
「俺だって、わかんねえよ。なんでかずがあんなに怒ってんのか。あんなに俺を拒絶したのか。わかんねえから、イライラしてんだよ」
「わかんねえって何だよそれ!」
「わかんねえもんは、わかんねえ」
ズズっ
相葉ちゃんの鼻を啜る声だけが楽屋に響いた。