時々、合宿所に泊まることがあって、そんな時カズは俺と同じ部屋で寝てた。
俺が淋しいからって言ったからなんだけど、実はカズは怖がりで、ひとりで合宿所の部屋で寝るのは怖いって前に言ってたから。
智くんの部屋で寝ていい?って聞いて、やだって言われたときの捨てられた子犬みたいな顔が可愛くて、思わず言ってたんだ。
「俺、ひとりで寝んの怖えから、カズ俺の部屋来るか?」
「しょーちゃん、いいの?」
「おう」
「ありがと、しょーちゃん」
そう言って、抱きついてきたカズはなんだか甘い匂いがした。
俺がひとりで寝るの怖えって言ったとき、バカにするやつがいるかもなあって思ったけど、面と向かって言うやつはひとりもいなかった。
俺、3秒でキレる櫻井で通ってたから。
実際、カズに初めて話しかけた時は、劇場のロビーでみんなで弁当食ってて、カズの隣で食ってたやつが片付けもしないで行っちまったのにムカついて。
「おまえ!それ片付けとけよ!」
って、理不尽にカズを叱りつけた。
本当に、よくそんな先輩に懐いてくれたよな。
同期のやつらに言わせると、俺はカズには甘いらしい。
多少、生意気なこと言ってても、視点が面白いから腹が立ったりしないんだよ。
あいつ、天才的に空気読むの上手いし、愛嬌あるってあーゆうのなんだろうな。
マジで色んなやつに可愛がられてるもん。
あの智くんが気を許すんだ。
当たり前っちゃ、当たり前なんだよ。
そんなこんなで、それ以来合宿所では俺とカズは同室だ。
みんなそれを知ってて、なにも言わなくてもふたりでひとつの部屋に割り振られるようになってた。
智くんが合宿所に泊まる日も、カズは俺と寝てて。良いのか?って思いながらも、カズが隣にいることが嬉しくて、なにも言わなかった。
淋しがりのカズは俺の布団に潜りこんできて、背中にピッタリくっついて眠るようになった。
俺がなんにも言わなかったからか、いつしかそれが当たり前になって、そのうち腕枕とかしてやるようになってた。
その頃には背の高さもなんとか逆転して、一応、守ってやるって体裁が立つようになったなんて、勝手に思ってた。