俺を押し返す雅紀の顔を見たら、泣きそうな目をしてて、なのに笑ってて。
何を言ったら良いのか、何か言っても良いのかわからなくなって、じっとその目を見つめた。
「しょーちゃん、ありがとう」
掠れてたけど優しい声と表情で言われて、ああちゃんと気持ち伝わったんだって、ほっとしたんだ。
もう一度、好きだってちゃんと言って、これからは何度だって言って、雅紀を2度と不安にさせたりしないって、心の中でも誓って。
雅紀を抱きしめようとしたとき、その声が聞こえた。
「今まで、ありがとう。これでお別れだね」
一瞬綺麗に笑った雅紀が、俺を押し退けて玄関のドアに手を伸ばす。
「雅紀?なに言ってるんだ?」
その手を掴まえて、焦って話しかける。
「だから、もう終わりなんでしょ?だから、サヨナラだよね。別れるんだから」
泣きそうだったのは、別れるから?
もう、涙も見せてはくれないのか?
なんでそんな顔してんだ。
なんで別れることになってるんだ?
「じゃあね、しょーちゃん。大好きだったよ」
開いたドアを、雅紀の手ごと引いてもう一度閉める。
「待って!雅紀、なんで別れるんだ?」
「え?」
「俺は、別れるつもりなんかないぞ」
きょとんとした顔で俺を見る雅紀。
何がどうなって、こうなってんだ?
とにかく、なんかの行き違い、誤解、そんなやつだ。
肩を持っておれと向かい合わせにして、顔を見て言う。
ここで言わなきゃ、雅紀は俺のことずっと信じてくれないだろう。
「俺、俺は、雅紀が好きだっ!!」
「え?」
「ちょっと恥ずかしいのと、クールな男がカッコいいと思って、言えなかった。てか、言わなかった。ごめん!!」
「ちょっと待って.....しょーちゃん、俺、よくわかんない....」
「好きなんだ。もっと好きになってもらいたくて、勘違いのバカやってたんだよ。雅紀が好きだ。信じて」
「嘘だ....」
「嘘じゃねえよ。好きだ。雅紀が好きだ」
「しょーちゃん.........」
「信じて雅紀。本当に好きなんだ。離したくないんだ」
ポロリとこぼした涙の粒が床に落ちた。
そっと引き寄せて抱きしめた雅紀は震えてた。